医療費は「診療報酬」というルールに基づき、患者様はどこの医療機関を受診しても一律とされ、大きく「基本診療料」と「特掲診療料」に分けられています。
外来の基本診療料には「初診料」「再診料」「オンライン診療料」などがあり、特掲診療料には「医学管理等」「検査」「画像診断」「投薬」「注射」「リハビリテーション」「処置」「手術」などがあげられます。

今回は 「基本診療料」とそれらに付随する加算の算定要件について解説していきたいと思います。
初診料について
保険医療機関において初診を行った場合には「288点」を算定します。
2022年4月よりオンライン診療料が廃止され、初診料に「情報通信機器を用いた場合」が新設されました。
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、 情報通信機器を用いた初診を行った場合には、251点を算定します。
初診料が算定できないケース
- 特に症状がなく健康診断を目的とする受診により疾病が発見された患者について、当該保険医が治療を開始した場合
- 同一保険医が別の保険医療機関で、同一患者に診療を行った場合
- 入院中である場合
- 労災保険、健康診断、自費により傷病の治療を受けている場合
- 現に診療継続中の患者に、新たに発生した別の傷病で診療した場合
初診料には以上のような要件がありますが、患者様が任意に診療を中止にし、1ヶ月以上経過した後に再び同一病名で受診した場合は、初診料が算定できます。

同じ医療機関で内科と眼科を初診した場合は、両方とも初診料を算定できるんですか?

2科までは算定できます!ただし3つ目は算定できないので注意です。また他科でも関係性ある疾患(例:糖尿病で内科を受診し、糖尿病網膜症精査のため眼科を受診)の場合は初診料を算定することができません・
POINT診療録には患者様の基本項目「氏名」「住所」「性別」「年齢」の記載が必ず必要です。
機能強化加算について
機能評価加算とは、適切な診療だけでなく、疾病に対する予防や健康に関する相談に応じ、必要に応じて専門医を紹介する「診療所」及び「200床未満の病院」を評価する点数として、80点を初診料に付随して算定できます。
この加算を算定するには、機能強化加算の施設基準に該当していること及び地方厚生局長等に届出をする必要があります。
機能強化加算は、年齢、疾病、診療科に関係なく全ての初診患者に加算でき、同一月に2回の初診料算定があった場合にも加算できます。

機能強化加算は初診料に加算できもので、再診料には加算できませんから気をつけてください。
初診時の乳児加算について
6歳未満の乳児に対して初診を行った場合は、乳幼児加算として「75点」を加算できます。
ただし「時間外加算」「休日加算」「深夜加算」を加算する場合は、合わせて算定することはできません。
初診時の時間外の加算について
保険医療機関が表示する標榜時間以外の時間であって、時間外、休日、夜間において初診を行った場合は、以下の点数を加算できます。
6歳以上 | 6歳未満 | |
時間外加算 | 85点 | 200点 |
休日加算 | 250点 | 365点 |
深夜加算 | 480点 | 695点 |
【時間外】
平日は6〜8時、18時〜22時、土曜日は6時〜8時、12時〜22時
【対象となる休日】
日曜日、国民の祝日、12月29日〜31日、1月2日、3日
【深夜】
22時〜6時まで
算定事例
小児科を標榜する診療所(機能強化加算届出済)
診療時間 9:00〜17:00(月〜金)
4歳1ヶ月の患者が日曜日の22時に緊急来院
- 初診料 228点
- 深夜加算 695点
- 機能強化加算 80点
※6歳未満の乳幼児に対して初診を行った場合は、乳幼児加算の75点を算定するとありますが、時間外加算・休日加算・深夜加算を算定する場合は算定できません。
カルテ記載について初診時の「主訴」「現病歴」「既往歴」「生活歴」などの記載が乏しい場合は厚生局の個別指導で指摘を受けますので、カルテ記載はしっかり行うようにしましょう。
また、時間外加算を算定する際は、診療開始時間を記載するなどして、算定要件を満たしていることを明確にしておきましょう。
レセプトの記載方法
- 時間外、休日、深夜加算を算定する場合は該当する箇所に○を
- 夜間・早朝など加算を算定した場合は「夜早」の略語を記入
- 同日に2科を受診した場合は「複初」と略語を記入し、当該診療科及び点数を記入する
- 小児科標榜の医療機関で特例を算定した場合は「特夜」、休日は「特休」、深夜は「特深」と略語を記入する
【新設】外来感染対策向上加算
組織的な感染防止対策につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関(診療所に限る)において初診を行った場合は、 外来感染対策向上加算として、月1回に限り6点を所定点数に加算します。
施設基準について
- 専任の院内感染管理者が配置されていること。
- 当該保険医療機関内に感染防止対策部門を設置し、組織的に感染防止対策を実施する体制が整備されていること。
- 感染防止対策につき、感染対策向上加算1に係る届出を行っている保険医療機関等と連携していること。
【新設】連携強化加算
感染対策向上加算届出医療機関であって、感染症対策に関する医療機関間の連携体制につき、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において初診を行った場合は、連携強化加算として、月1回に限り3点を更に所定点数に加算します。
施設基準について他の保険医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っているものに限る)との連携体制が確保されていること。
【新設】サーベイランス強化加算
感染対策向上加算届出医療機関であって、感染防止対策に資する情報を提供する体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において初診を行った場合は、サーベイランス強化加算として、月1回に限り1点を更に所定点数に加算する。
施設基準について地域において感染防止対策に資する情報を提供する体制が整備されていること。
【新設】電子的保健医療情報活用加算
別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者さんに対して、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認により、当該患者さんに係る診療情報等を取得した上で初診を行った場合は、 電子的保健医療情報活用加算として、月1回に限り7点を所定点数に加算します。ただし、当該患者さんに係る診療情報等の取得が困難な場合又は他の保険医療機関から当該患者さんに係る診療情報等の提供を受けた場合等にあっては、月1回に限り3点を所定点数に加算します。
施設基準について(1)療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和五十一年厚生省令第三十六号)第一条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を行っていること。
(2)健康保険法第三条第十三項に規定する電子資格確認を行う体制を有していること。
(3)(2)の体制に関する事項について、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること。
再診料について
診療所及び200床未満の病院において再診が行われた場合に「73点」を算定します。
また、2つ以上の傷病について同時に再診を行った場合は、1回限りの算定になりますので同じく「73点」を算定します。
新設!!2022年4月よりオンライン診療料が廃止され、「情報通信機器を用いた再診」(73点)が算定できるようになりました。オンライン診療料は月1回の算定でしたが、情報通信機器を用いた再診には算定回数の制限はありません。
再診料が算定できないケース
- 検査、画像診断の結果のみを聞きに来た場合
- 往診後に処方箋を受け取りに来院した場合

初診料で説明したように、再診料も合わせて2科目までしか算定できませんので、気を付けてください。
※同日再診料を算定する場合は、再診に係る根拠についての記載が必要であり、一連の流れでは算定することができません。
外来管理加算について
外来管理加算は「医師による」以下のように計画的な医学管理を行った場合に算定できます。
- 丁寧な問診
- 詳細な身体診察(視診・聴診・触診・打診等)
- 症状の説明と確認
- 療養上の注意点の説明
- 患者の療養上の疑問や不安を解消するための取組
これら全ての項目を満たす必要はなく、患者の状態から必要だと思われるものを行うこととし、 患者からの聴取事項、診察所見、診断、治療の要点を診療録に記載する必要があります。

ただし、以下を行った場合には外来管理加算を算定することができませんので注意してください。
- 処置
- リハビリテーション
- 超音波検査等
- 脳波検査等
- 神経・筋検査
- 耳鼻咽喉科学的検査
- 眼科学的検査
- 負荷試験等
- ラジオアイソトープを用いた諸検査
- 内視鏡検査
※慢性疼痛疾患管理料との併算定もできませんので注意しましょう。
ここにも注意!やむを得ない事情で看護にあたっている者から症状を聞いて薬剤投与した場合には、外来管理加算を算定することはできません。
外来管理加算 請求時の注意点
診療日と検査日が別日であっても一連のものであれば、外来管理加算の算定はできません。
例)令和4年8月1日に診察を行い腹部エコー検査の予約を行った
再診料+外来管理加算算定
令和4年8月3日に腹部エコー検査のみを行った
超音波検査料を算定
上記の場合ですと、全ての算定要件を満たしているように思えますが、8月1日と8月3日は一連の診療と検査であるため、8月1日の外来管理加算を算定することはできません。
再診時の乳児加算について
6歳未満の乳児に対して再診を行った場合は、乳幼児加算として「38点」を加算できます。
ただし 「時間外加算」「休日加算」「深夜加算」を加算する場合は、合わせて算定することはできません。
再診料の時間外の加算について
保険医療機関が表示する標榜時間以外の時間であって、時間外、休日、夜間において再診を行った場合は、以下の点数を加算する。
6歳以上 | 6歳未満 | |
時間外加算 | 65点 | 135点 |
休日加算 | 190点 | 260点 |
深夜加算 | 420点 | 590点 |
【時間外】
平日は6〜8時、18時〜22時、土曜日は6時〜8時、12時〜22時
【対象となる休日】
日曜日、国民の祝日、12月29日〜31日、1月2日、3日
【深夜】
22時〜6時まで
その他の加算について
診療所に限って、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しており、地方厚生局等に届け出た保険医療機関においては以下のような加算が算定できます。
- 時間外対応加算
- 地域包括診療加算
- 明細書発行体制加算(届出不要)
- 認知症地域包括診療加算(届出不要)
POINT!!初診の記事でお伝えした「外来感染対策向上加算」「連携強化加算」「サーベイランス強化加算」「電子的保険医療情報活用加算」も算定要件を満たしていれば再診料の加算としても算定できます。
外来診療料について
許可病床のうち一般病床に係る数が200以上である保険医療機関において再診を行った場合に「74点」を算定します。
再診料とは異なり、一部の検査と処置は外来診療料に包括されるため算定できない項目がありますので注意が必要です。
乳幼児及び時間外の加算点数については再診料と同じです。
新設!!2022年4月よりオンライン診療料が廃止され、「情報通信機器を用いた再診」(73点)が算定できるようになりました。オンライン診療料は月1回の算定でしたが、情報通信機器を用いた再診には算定回数の制限はありません。
外来診療料に包括される処置・検査項目
- J000 創傷処置1.2
- J053 皮膚科軟膏処置1
- J072 膣洗浄
- J089 睫毛抜去
- J097 鼻処置
- J114 ネブライザー
- J118ー2 矯正固定
- J119ー2 腰部または胸部固定帯固定
- J001ー7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)
- J060 膀胱洗浄
- J086 眼処置
- J095 耳処置
- J115 超音波ネブライザー
- J118ー3 変形機械矯正術
- J119ー3 低出力レーザー照射
- J001ー8 穿刺排膿後薬液注入
- J060ー2 後部尿道洗浄(ウルツマン)
- J086ー2 義眼処置
- J096 耳管処置
- J099 間接喉頭鏡下喉頭処置
- J118 介達牽引
- J119 消炎鎮痛等処置
- J119ー4 肛門処置
- D000〜D002ー2 尿検査全て
- D003 糞便検査(カルプロテクチンを除く)
- D005 血液形態・機能検査
ただし、包括される検査い係る判断料や検査料は算定できます。
診療録記載の注意点について
厚生局での個別指導では「診療録の記載の乏しさ」が多く指摘されています。
特に注意したいのは、診療録の記載が乏しいことで医師法で禁止されている「無診察治療」ではないかと誤解されてしまうことです。
診療録は、保険請求の根拠となるものです。医師は診察の都度「症状」「所見」「診断」「治療内容」「方針」「治療計画」などしっかり記載することが大切です。