訪問診療(在宅医療)とは、通院が困難な患者さんのもと(お家や老人ホーム等の施設)に出向いて医師が定期的に診療を行い、計画的に治療や医学管理等を行うものです。
在宅で療養を行っている患者さんであって、通院が困難なものに対しご本人の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合に以下の点数を算定することができます。
注意点!!
独歩で家族や介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、通院は容易であると考えられるため、在宅患者訪問診療料は算定できません。
C001 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)1日につき
1 在宅患者訪問診療料1
イ 同一建物居住者以外の場 888点
ロ 同一建物居住者の場合 187点
C001-2 在宅患者訪問診療料(Ⅱ) 1日につき 150点
訪問診療と往診の違い「訪問診療」とは定期的かつ計画的に医師が自宅を訪問して診療するものであり、「往診」とは急変時など患者本人もしくは家族や看護にあたる者から求められ速やかに自宅等を訪問して行う診療になります。

初診料を算定した初診の日には算定できません。
在宅患者訪問診療料1の算定要件
在宅で療養を行っている「通院が困難な方」に対して、患者さんの同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合に算定します。
また、患者さんの急性増悪等により一時的に頻回の訪問診療を行う必要性を認め、計画的な医学的管理の下に、在宅での療養を行っている方であって通院が困難な方に対して訪問診療を行った場合には、1月に1回に限り、当該診療の日から 14日以内に行った訪問診療については14日を限度として算定できます。
在宅患者訪問診療料2の算定要件

往診料を算定する往診の日の翌日までに行った訪問診療(在宅療養支援診療所 又は在宅療養支援病院の保険医が行ったものを除く)の費用は算定できません。
訪問診療同意書とカルテ記載

訪問診療を実施する場合には、以下の要件を満たすことが必要です。
- 当該患者又はその家族等の署名付の訪問診療に係る同意書を作成した上で診療録に添付すること。
- 訪問診療の計画及び診療内容の要点を診療録に記載すること。「2」を算定する場合には、主として診療を行う医師である保険医が所属する他の保険医療機関が診療を求めた傷病も記載すること。
- 訪問診療を行った日の診療時間(開始時刻と終了時刻)及び診療場所について、診療録に記載すること。
カルテ記載例
記載例開始時間09:00〜 住宅型有料老人ホーム◯○◯201号室
S:この頃不安が強く眠れない日が続いてる
入居者とのトラブルもあり自室にいる時間が多くなった
O:血圧122/64、脈拍110 回/分、SpO2 94%、体温37.0℃
活気低下
意識レベル良好
雑音なし
両下肢に軽度浮腫あり
A:
#1 慢性心不全
依然と比較し浮腫の改善あり
利尿剤継続とする
#2 アルツハイマー型認知症
ご主人のご逝去から不安症状あり、ここ数日で被害妄想、物忘れが増強している
まずは本日よりアリセプト3mg服用開始し経過観察とする
#3 不眠症
夜間眠れず、徘徊もみられる
眠剤追加し経過観察とする
P:本日よりアリセプト、マイスリー開始
施設職員、ご家族に転倒に気をつけるようお伝えした
次回は2週間後のフォローをとする
#2については副作用の有無を確認し、内服増量を検討する
終了時間09:10
同一世帯の複数診察について
同居する同一世帯の複数の患者さんに対して診察をした場合ですが、1人目は「同一建物居住者以外の場合」を算定し、2人目以降の患者については「初診料」「再診料」「外来診療料」「第2章特掲診療料」を算定します。この場合において、2人目の患者さんの診療に要した時間が1時間を超えた場合は、その旨を診療報酬明細書の摘要欄に記載し、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)に加算を算定します。
加算について
乳幼児加算
6歳未満の乳幼児に対して訪問診療を行った場合には、乳幼児加算として400点を所定点数に加算できます。
患家診療時間加算
患家における診療時間が1時間を超えた場合は、患家診療時間加算として、30分又はその端数を増すごとに、100点を所定点数に加算する。
ターミナル加算
在宅で死亡した患者さん(往診又は訪問診療を行った後、24時間以内に在宅以外で 死亡した患者を含む)に対し、その死亡日及び死亡日前14日以内に、2回以上の往診又は訪問診療を実施した場合(1を算定する場合に限る。)には、当該患者に係る区分等に従い、在宅ターミナルケア加算として、以下の点数を、それぞれ所定点数に加算することができます。
イ 有料老人ホーム等に入居する患者以外の患者
( 1 ) 在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院であって別に厚生労働大臣が定めるものの場合(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に記載している必要な届け出(1)(2)に該当するもの)
- 病床を有する場合 6,500点
- 病床を有しない場合 5,500点
( 2 ) 在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院の場合((1)を除く場合) 4,500点
(3) ( 1 )及び( 2 )に掲げるもの以外の場合 3,500点
ロ 有料老人ホーム等に入居する患者
( 1 ) 在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院であって別に厚生労働大臣が定めるものの場合(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に記載している必要な届け出(1)(2)に該当するもの)
- 病床を有する場合 6,500点
- 病床を有しない場合 5,500点
( 2 ) 在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院の場合((1)を除く場合)4,500点
(3) ( 1 )及び( 2 )に掲げるもの以外の場合 3,500点
ただし、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関(※1)が行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、在宅緩和ケア充実診療所・病院加算、在宅療養実績加算1又は在宅療養実績加算2として、それぞれ1,000点、750点又は500点を、がん患者に対して酸素療法を行っていた場合は酸素療法加算として2,000点を更に所定点数に加算できます。
在宅ターミナル加算について在宅ターミナルケア加算は、死亡日及び死亡日前 14 日以内の計15 日間に2回以上往診又は訪問診療を行った患者が、在宅で死亡した場合(往診又は訪問 診療を行った後、24 時間以内に在宅以外で死亡した場合を含む。)に算定することができます。この場合、診療内容の要点等を診療録に記載することが必要です。また、ターミナルケアの実施については、 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラ イン」等の内容を踏まえ、患者本人及びその家族等と話し合いを行い、患者本人の意思決定を基本に、他の関係者との連携の上対応することが必要です。
※1の施設基準とは
1.在宅緩和ケア充実診療所・病院加算の施設基準
在宅緩和ケアを行うにつき十分な体制が整備され、相当の実績を有していること。
2.在宅療養実績加算1の施設基準
緊急の往診及び在宅における看取りについて、相当の実績を有していること。
3.在宅療養実績加算1の施設基準
イ 緊急の往診及び在宅における看取りについて、相当の実績を有していること。
ロ 当該保険医療機関に在宅医療を担当する医師であって、緩和ケアに関する適切な研修を受けたものが配置されていること。
看取り加算
往診又は訪問診療を行い、在宅で患者を看取った場合(1を算定する場合に限る)には、看取り加算として、3,000点を所定点数に加算します。
死亡診断加算
死亡診断を行った場合(1を算定する場合に限る。)には、死亡診断加算とし て、200点を所定点数に加算する。ただし、看取り加算を算定する場合は算定できません。

訪問診療に要した交通費は、患家の負担となります。
特別養護老人ホームの患者さんについて
在宅での療養を行っている患者さんとは、保険医療機関、介護老人保健施設又は介護医療院で療養を行っている以外の方をいいます。ただし「要介護被保険者等である患者さんについて療養に要する費用の額を算定できる場合」「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」等に規定する場合を除き、医師の配置が義務づけられている施設に入所している方については算定の対象としないとされています。