【2024年】感染対策向上加算の算定要件と施設基準について

感染対策向上加算は、院内感染防止対策を行った上で、院内に感染制御チームを設置し、院内感染状況の把握、抗菌薬の適正使用、職員の感染防止等を行うことによる医療機関の感染防止対策の実施や地域の医療機関等が連携して実施する感染症対策の取組、新興感染症の発生時等に都道府県等の要請を受けて感染症患者を受け入れる体制等の確保を評価するものとなっております。

抗菌薬の適正使用について

細菌感染症の治療において患者さんの予後を改善するためには、病原体も含めて的確に感染症の診断を行い、適切なタイミングで最も効果的な抗菌薬を投与することが重要とされています。

抗菌薬を投与することにより病状の改善を図ることができても、薬剤耐性菌が発生したり抗菌薬の副作用が生じたりすることがあります。(多剤耐性菌が出現すれば、効果的な治療ができず患者さんの予後に大きな影響を与えてしまいます)

このため、抗菌薬の必要な病態かどうかを見極め、必要であれば最大限の治療効果を引き出すように使用するとともに、患者に害を与えず、耐性菌を増やさないことが、抗菌薬の適正使用で目指すところとされています。

当該保険医療機関に入院している患者さんについて、感染対策向上加算1及び感染対策向上加算2は入院初日に以下の点数を算定し、感染対策向上加算3は入院初日及び入院期間が90日を超えるごとに以下の点数を1回算定します。90日を超えるごとの計算は、入院日から起算して91日目、181日目等と計算します。

A234-2 感染対策向上加算(入院初日)

感染対策向上加算1 710点

感染対策向上加算2 175点

感染対策向上加算3   75点

入院期間が通算される再入院の場合は算定できず、感染対策向上加算3については通算した入院期間から算出し算定します。

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感染制御チームの業務について

  • 感染制御チームは、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実施状況の把握・指導を行う。また、院内感染事例、院内感染の発生率に関するサーベイランス等の情報を分析、評価し、効率的な感染対策に役立てる。院内感染の増加が確認された場合には病棟ラウンドの所見及びサーベイランスデータ等を基に改善策を講じる。巡回、院内感染に関する情報を記録に残す。
  • 感染制御チームは微生物学的検査を適宜利用し、抗菌薬の適正使用を推進する。感染対策向上加算1及び感染対策向上加算2の届出を行っている保険医療機関にあっては、バンコマイシン等の抗MRSA薬及び広域抗菌薬等の使用に際して届出制又は許可制をとり、投与量、投与期間の把握を行い、臨床上問題となると判断した場合には、投与方法の適正化をはかる。感染対策向上加算3の届出を行っている保険医療機関にあっては、感染対策向上加算1を算定する他の保険医療機関又は地域の医師会とのカンファレンス等により助言を受け、適切に抗MRSA薬及び広域抗菌薬等が使用されているか確認する。
  • 感染制御チームは院内感染対策を目的とした職員の研修を行う。また院内感染に関するマニュアルを作成し、職員がそのマニュアルを遵守していることを巡回時に確認する。
  • 感染制御チームは緊急時に地域の医療機関同士が速やかに連携して各医療機関の対応への支援がなされるよう、日常的な相互の協力関係を築く。なお、その際、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関の感染制御チームが中心的な役割を担う。
  • 感染制御チームは保健所や地域の医師会と適切な連携体制を構築する。

加算が算定できる入院料について

感染対策向上加算については、以下の入院料に対して加算を算定することが可能です。

  • 一般病棟入院基本料
  • 療養病棟入院基本料
  • 結核病棟入院基本料
  • 精神病棟入院基本料
  • 特定機能病院入院基本料
  • 専門病院入院基本料
  • 障害者施設等入院基本料
  • 有床診療所入院基本料
  • 有床診療所療養病床入院基本料
  • 救命救急入院料
  • 特定集中治療室管理料
  • ハイケアユニット入院医療管理料
  • 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
  • 小児特定集中治療室管理料
  • 新生児特定集中治療室管理料
  • 総合周産期特定集中治療室管理料
  • 新生児治療回復室入院医療管理料
  • 一類感染症患者入院医療管理料
  • 特殊疾患入院医療管理料
  • 小児入院医療管理料
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
  • 地域包括ケア病棟入院料
  • 特殊疾患病棟入院料
  • 緩和ケア病棟入院料
  • 精神科救急急性期医療入院料
  • 精神科急性期治療病棟入院料
  • 精神科救急・合併症入院料
  • 児童・思春期精神科入院医療管理料
  • 精神療養病棟入院料
  • 認知症治療病棟入院料
  • 特定一般病棟入院料
  • 地域移行機能強化病棟入院料
  • 特定機能病院リハビリテーション病棟入院料

指導強化加算について

感染対策向上加算1を算定する場合について、感染症対策に関する医療機関間の連携体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者さんについては、指導強化加算として、30点を算定します。

指導強化加算の施設基準

他の保険医療機関(感染対策向上加算2、感染対策向上加算3又は外来感染対策向上加算に係る届出を行っている保険医療機関に限る。)に対し、院内感染対策に係る助言を行うための必要な体制が整備されていること。

連携強化加算について

感染対策向上加算2又は感染対策向上加算3を算定する場合について、感染症対策に関する医療機関間の連携体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者さんについては、連携強化加算として、30点を算定します。

POINT

感染症の発生状況、抗菌薬の使用状況等について報告が必要です。

連携強化加算の施設基準

他の保険医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っている保険医療機関に限る。)との連携体制を確保していること。

サーベイランス強化加算について

感染対策向上加算2又は感染対策向上加算3を算定する場合について、感染防止対策に資する情報を提供する体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者については、サーベイランス強化加算として5点を算定します。

POINT

院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加している場合に算定します。

サーベイランス強化加算の施設基準

地域において感染防止対策に資する情報を提供する体制が整備されていること。

感染対策向上加算1の施設基準

 専任の院内感染管理者が配置されていること。

 当該保険医療機関内に感染防止対策部門を設置し、組織的に感染防止対策を実施する体制が整備されていること。

 当該部門において、感染症対策に関する十分な経験を有する医師及び感染管理に関する十分な経験を有する看護師(感染防止対策に関する研修を受けたものに限る。)並びに病院勤務に関する十分な経験を有する薬剤師及び臨床検査技師が適切に配置されていること。

 感染防止対策につき、感染対策向上加算2又は感染対策向上加算3に係る届出を行っている保険医療機関等と連携していること。

 他の保険医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っている保険医療機関に限る。)との連携により感染防止対策を実施するための必要な体制が整備されていること。

 抗菌薬を適正に使用するために必要な支援体制が整備されていること。

感染対策向上加算2の施設基準

 専任の院内感染管理者が配置されていること。

 当該保険医療機関内に感染防止対策部門を設置し、組織的に感染防止対策を実施する体制が整備されていること。

 当該部門において、感染症対策に関する十分な経験を有する医師及び感染管理に関する十分な経験を有する看護師並びに病院勤務に関する十分な経験を有する薬剤師及び臨床検査技師が適切に配置されていること。

ニ 感染防止対策につき、感染対策向上加算1に係る届出を行っている保険医療機関と連携していること。

感染対策向上加算3の施設基準

 専任の院内感染管理者が配置されていること。

 当該保険医療機関内に感染防止対策部門を設置し、組織的に感染防止対策を実施する体制が整備されていること。

 当該部門において、医師及び看護師が適切に配置されていること。

 感染防止対策につき、感染対策向上加算1に係る届出を行っている保険医療機関と連携していること。

届出を行う地方厚生局HPについて

届出を行う際は、医療機関が所在する都道府県を管轄する『地方厚生局』に必要書類を提出して申請を行う必要があります。

基本診療料の各書式(令和6年)については、各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。

届出時の留意事項

  • 各月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から当該届出に係る診療報酬を算定することができます。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から算定することができます。
  • 施設基準等の届出に当たっては、原則として郵便による送付をお願いしております。(FAXによる届出はできません。)
  • 届出書は、正本1通(届出書にかかる添付書類を含む)を提出してください。なお、控えとして送付した正本のコピー等を保存してください。
  • 「行政手続きに係る押印を不要とする取扱いについて」により、本ページに掲載されている様式は、令和3年2月1日以降、押印が不要となりました。
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