地域包括診療加算はかかりつけ医機能を評価する点数で、診療所が対象となる加算です。
脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る)又は認知症のうち2以上の疾患を有する患者さんに対して、当該患者さんの同意を得て、療養上必要な指導及び診療を行った場合に、地域包括診療加算として、当該基準に係る区分に従い、以下の点数を算定します。
厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た診療所において算定可能です。
地域包括診療加算1 28点
地域包括診療加算2 21点
地域包括診療加算とは
地域包括診療加算は、外来の機能分化の観点から、主治医機能を持った診療所の医師が、複数の慢性疾患を有する患者さんに対し、患者さんの同意を得た上で、継続的かつ全人的な医療を行うことについて評価したものであり、初診時や訪問診療時(往診を含む)は算定でません。
地域包括診療料と地域包括診療加算の届け出についてはどちらか一方に限ります。
担当医師について
地域包括診療加算を算定するにあたっては、患者さんを診療する担当医を決めることが必要です。担当医は、慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了している必要があります。
適切な研修とは
慢性疾患の指導に係る適切な研修とは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症及び認知症を含む複数の慢性疾患の指導に係る研修のことをいいます。服薬管理、健康相談、介護保険、禁煙指導、在宅医療等の主治医機能に関する内容が適切に含まれ、継続的に2年間で通算20時間以上の研修を修了しているものでなければならなりません。そのため初回に届出を行ったあとは、2年毎に届出を行うことが必要です。原則として、e-ラーニングによる研修の受講は認められませんが、研修は複数の学会等と共同して行われるもので可能とされています。
医師以外の指導について
服薬、運動、休養、栄養、喫煙、家庭での体重や血圧の計測、飲酒、その他療養を行うに当たっての問題点等に係る生活面の指導については、必要に応じて、当該医師の指示を受けた看護師、管理栄養士又は薬剤師が行った場合についても算定可能です。
指導及び服薬管理について
地域包括診療加算を算定するにあたっては、患者さんの同意を得て、計画的な医学管理の下に療養上必要な指導及び診療を行うこととされています。
また、他の保険医療機関と連携の上、患者さんが受診している医療機関を全て把握するとともに、患者さんに処方されている医薬品を全て管理し、診療録に記載することも必要です。
また、原則として処方箋の発行については、「院内処方」となっていますが、以下の場合に限り院外処方が可能とされています。
院外処方を行う場合は、以下のとおりとする。
- 調剤について 24 時間対応できる体制を整えている薬局と連携していること。
- 原則として、院外処方を行う場合は連携薬局にて処方を行うこととするが、患者さんの同意がある場合に限り、その他の薬局での処方も可能とする。その場合、当該患者さんに対して、時間外においても対応できる薬局のリストを文書により提供し、説明すること。
- 患者さんが受診している医療機関のリスト及び当該患者が当該加算を算定している旨を、処方箋に添付して患者さんに渡すことにより、当該薬局に対して情報提供を行うこと。
- 患者さんに対して、当該医療機関を受診時に、薬局若しくは当該医療機関が発行するお薬手帳を持参させること。また、当該患者の院外処方を担当する保険薬局から文書で情報提供を受けることでもよい。なお、保険薬局から文書で情報提供を受けた場合も、患者さんに対し、事後的にお薬手帳の提示に協力を求めることが望ましい。
- 診療録にお薬手帳若しくは保険薬局からの文書のコピーを添付又は当該点数の算定時の投薬内容について診療録に記載すること。
診療体制について
標榜時間外の電話等による問い合わせに対応可能な体制を確保する必要があります。
連絡先についても患者さんへお伝えし、患者さん又はその家族等から連絡を受けた場合には、受診の指示等、速やかに必要な対応を行うことが必要です。
健康状態の管理について
患者さんに対し、健康診断や検診の受診勧奨を行い、その結果等を診療録に記載するとともに、患者さんへ提供し、評価結果を基に患者さんの健康状態を管理しましょう。
主治医意見書の作成について必要に応じ、要介護認定に係る主治医意見書を作成することが必要です。
予防接種の管理について
患者さんの予防接種の実施状況を把握し、患者さんからの予防接種に係る相談に対応しましょう。
患者さんの同意について
初回算定時に、別紙様式 47を参考に、患者さんの署名付の同意書を作成し、診療録に添付することが必要です。ただし、直近1年間に4回以上の受診歴を有する患者さんについては、別紙様式 47を参考に診療の要点を説明していれば、同意の手続きは省略してよいとされています。
地域包括診療加算に関する説明書及び同意書
院内掲示について
院内掲示により以下の対応が可能なことを周知し、患者さんの求めがあった場合に適切に対応しましょう。
- 健康相談を行っていること。
- 介護保険に係る相談を行っていること。
- 予防接種に係る相談を行っていること。
抗菌薬の適正な使用について
抗菌薬の適正な使用を推進するため、「抗微生物薬適正使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考に、抗菌薬の適正な使用の普及啓発に資する取組を行っていることが必要です。
診療体制について
地域包括診療加算1を算定する医療機関においては、往診又は訪問診療を提供可能であること。往診又は訪問診療の対象の患者さんには、24 時間対応可能な連絡先を提供し、患者さん又はその家族等から連絡を受けた場合には、往診、外来受診の指示等、速やかに必要な対応を行うことが必要です。
令和6年 地域包括診療加算1に関する施設基準
(1)から(12)までの基準を全て満たしていること。
(1) 診療所であること。
(2) 当該医療機関に、慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師(以下「担当医」という。)を配置していること。なお、担当医は認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましい。
(3) 次に掲げる事項を院内の見やすい場所に掲示していること。
ア 健康相談及び予防接種に係る相談を実施していること。
イ 当該保険医療機関に通院する患者について、介護支援専門員(介護保険法第7条第5項に規定するものをいう。以下同じ。)及び相談支援専門員(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準第3条に規定するものをいう。以下同じ。)からの相談に適切に対応することが可能であること。
ウ 患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であること。
(4) (3)の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること。自ら管理するホームページ等を有しない場合については、この限りではないこと。
(5) 当該患者に対し院外処方を行う場合は、24 時間対応をしている薬局と連携をしていること。
(6) 当該保険医療機関の敷地内における禁煙の取扱いについて、次の基準を満たしていること。
ア 当該保険医療機関の敷地内が禁煙であること。
イ 保険医療機関が建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有又は借用している部分が禁煙であること。
(7) 介護保険制度の利用等に関する相談を実施している旨を院内掲示し、かつ、要介護認定に係る主治医意見書を作成しているとともに、以下のいずれか一つを満たしていること。
ア 介護保険法(平成9年法律第123号)第46条第1項に規定する指定居宅介護支援事業者の指定を受けており、かつ、常勤の介護支援専門員を配置していること。
イ 介護保険法第8条第6項に規定する居宅療養管理指導又は同条第10項に規定する短期入所療養介護等を提供した実績があること。
ウ 当該保険医療機関において、同一敷地内に介護サービス事業所(介護保険法に規定する事業を実施するものに限る。)を併設していること。
エ 担当医が「地域包括支援センターの設置運営について」(平成18年10月18日付老計発
1018001 号・老振発 1018001 号・老老発 1018001 号厚生労働省老健局計画課長・振興課長・老人保健課長通知)に規定する地域ケア会議に年1回以上出席していること。
オ 介護保険によるリハビリテーション(介護保険法第8条第5項に規定する訪問リハビリテーション、同条第8項に規定する通所リハビリテーション、第8条の2第4項に規定する介護予防訪問リハビリテーション及び同条第6項に規定する介護予防通所リハビリテーションに限る。)を提供していること(なお、要介護被保険者等に対して、維持期の運動器リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料又は廃用症候群リハビリテーション料を原則として算定できないことに留意すること。)。
カ 担当医が、介護保険法第14条に規定する介護認定審査会の委員の経験を有すること。
キ 担当医が、都道府県等が実施する主治医意見書に関する研修会を受講していること。
ク 担当医が、介護支援専門員の資格を有していること。
ケ 担当医が、「認知症初期集中支援チーム」等、市区町村が実施する認知症施策に協力している実績があること。
(8) 在宅医療の提供及び当該患者に対し24時間の往診等の体制を確保していること特掲診療料施設基準通知の第9在宅療養支援診療所の施設基準の1の(1)に規定する在宅療養支援診療所以外の診療所については、連携医療機関の協力を得て行うものを含む。
(9) 以下のいずれか1つを満していること。
ア 時間外対応加算1、2、3又は4の届出を行っていること。
イ 常勤換算2名以上の医師が配置されており、うち1名以上が常勤の医師であること。
ウ 在宅療養支援診療所であること。
(10) 以下のア~ウのいずれかを満たすこと。
ア 担当医が、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第9号に規定するサービス担当者会議に参加した実績があること。
イ 担当医が、「地域包括支援センターの設置運営について」(平成18年10月18日付老計発1018001号・老振発1018001号・老老発1018001号厚生労働省老健局計画課長・振興課長・老人保健課長通知)に規定する地域ケア会議に出席した実績があること。
ウ 保険医療機関において、介護支援専門員と対面あるいはICT等を用いた相談の機会を設けていること。なお、対面で相談できる体制を構築していることが望ましい。
(11) 外来診療から訪問診療への移行に係る実績について、以下の全てを満たしていること。
ア 直近1年間に、当該保険医療機関での継続的な外来診療を経て、「C000」往診料、「C001」在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「1」又は「C001-2」在宅患者訪問診療料 (Ⅱ)(注1のイの場合に限る。)を算定した患者の数の合計が、在宅療養支援診療所については10人以上、在宅療養支援診療所以外の診療所については3人以上であること。
イ 直近1か月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が70%未満であること。
(12) 当該保険医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること。
令和6年 地域包括診療加算2に関する施設基準
以下の全てを満たしていること。
(1) 地域包括診療加算1の(1)から(7)まで、(9)、(10)及び(12)を満たしていること。
(2) 在宅医療の提供及び当該患者に対し 24時間の連絡体制を確保していること。
届出を行う地方厚生局HPについて
届出を行う際は、医療機関が所在する都道府県を管轄する『地方厚生局』に必要書類を提出して申請を行う必要があります。
基本診療料の各書式(令和6年)については、各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。
届出時の留意事項
- 各月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から当該届出に係る診療報酬を算定することができます。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から算定することができます。
- 施設基準等の届出に当たっては、原則として郵便による送付をお願いしております。(FAXによる届出はできません。)
- 届出書は、正本1通(届出書にかかる添付書類を含む)を提出してください。なお、控えとして送付した正本のコピー等を保存してください。
- 「行政手続きに係る押印を不要とする取扱いについて」により、本ページに掲載されている様式は、令和3年2月1日以降、押印が不要となりました。