2022年改定|医師事務作業補助体制加算の算定要件と施設基準

医師事務作業補助体制加算

医師の負担軽減や処遇改善を図るために医師事務作業補助者の体制を整え、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関は(入院基本料または特定入院料のうち「医師事務作業補助体制加算」を算定できるもの)、入院初日に限り以下の点数が加算できます。

ここでは医師事務作業補助者の点数や算定要件及び施設基準についてを解説したいと思います。

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医師事務作業補助者の業務とは

医師事務作業補助者とは、医師の指示のもと以下の業務を行うものとされています。

  • 診断書等の文書作成補助
  • 診療記録への代行入力
  • 医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
  • 入院時の案内等の病棟における患者対応業務及び行政上の業務(救急医療情報システムへの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)
※以下の業務内容は医師事務作業補助者の業務内容とされていません。
  • 医師以外の職種の指示の下に行う業務
  • 診療報酬の請求事務(DPCのコーディングに係る業務を含む。)
  • 窓口・受付業務
  • 医療機関の経営、運営のためのデータ収集業務
  • 看護業務の補助及び物品運搬業務等

点数について(2022年改定)

医師事務作業補助体制加算1

イ 15対1補助体制加算 1050点

ロ 20対1補助体制加算 835点

ハ 25対1補助体制加算 705点

ニ 30対1補助体制加算 610点

ホ 40対1補助体制加算 510点

ヘ 50対1補助体制加算 430点

ト 75対1補助体制加算 350点

チ 100対1補助体制加算 300点

医師事務作業補助体制加算2

イ 15対1補助体制加算 975点

ロ 20対1補助体制加算 770点

ハ 25対1補助体制加算 645点

ニ 30対1補助体制加算 560点

ホ 40対1補助体制加算 475点

ヘ 50対1補助体制加算 395点

ト 75対1補助体制加算 315点

チ 100対1補助体制加算 260点

医師事務作業補助者加算が算定できる特定入院料について

以下の特定入院料に対して医師事務作業補助体制加算を算定することが可能です。

  • 救命救急入院料
  • 特定集中治療室管理料
  • ハイケアユニット入院医療管理料
  • 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
  • 小児特定集中治療室管理料
  • 合周産期特定集中治療室管理料
  • 新生児治療回復室入院医療管理料
  • 一類感染症患者入院医療管理料
  • 特殊疾患入院医療管理料
  • 小児入院医療管理料
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
  • 地域包括ケア病棟入院料
  • 特殊疾患病棟入院料
  • 緩和ケア病棟入院料
  • 精神科急性期治療病棟入院料
  • 精神科救急・合併症入院料
  • 児童・思春期精神科入院医療管理料
  • 精神療養病棟入院料
  • 認知症治療病棟入院料
  • 特定一般病棟入院料
  • 地域移行機能強化病棟入院料

医師事務作業補助者の配置について

医師事務作業補助者は、医師の業務状況等を考慮して配置することとされ、病棟における業務以外にも、外来での業務や、文書作成業務専門の部屋等における業務も行うことも可能です。
診断書等の文書作成補助、診療記録への代行入力、医療の質の向上に資する事務作業に限っては、医療機関内での実施の場所を問わず、病棟又は外来における医師事務作業補助の業務時間に含めることとされています。

医師事務作業補助体制加算1を算定する場合、2022年の改訂により「当該保険医療機関において3年以上の医師事務作業補助者として勤務経験を有するものが、配置区分ごとに5割以上配置されていること」が算定要件に追加されました。

医師事務作業補助体制加算の施設基準

医師事務作業補助体制加算1

イ 医師の事務作業を補助する十分な体制がそれぞれの加算に応じて整備されていること。

ロ 勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制が整備されていること。

医師事務作業補助体制加算2

イ 医師の事務作業を補助する体制がそれぞれの加算に応じて整備されていること。

ロ 医師事務作業補助体制加算1の「ロ」を満たすものであること。

医師事務作業補助体制加算1の施設基準

(1)15対1補助体制加算の施設基準

算定するには、以下のいずれかを満たしている必要があります。

  1. 緊急医療対策事業実施要網に規定する第三次救急医療機関、小児救急医療機関拠点病院または、周産期医療の体制構築に係る指針に規定する総合周産期母子医療センターを設置している保険医療機関であること。
  2. 年間の緊急入院者数が800以上の実績を有する病院であること。

(2)20対1〜40対1補助体制加算の施設基準

算定するには、以下のいずれかを満たしている必要があります。

  1. 15対1の施設基準を満たしていること。
  2. 「災害時における医療体制の充実強化について」に規定する災害拠点病院、「へき地保険医療対策事業について」に規定するへき地医療拠点病院または地域医療支援病院の指定を受けている。
  3. 「基本診療料の施設基準等」別紙第6の2に掲げる地域に所在する保険医療機関であること。
  4. 年間の緊急入院患者数が200名以上または全身麻酔による手術件数が年間800以上実績を有する病院であること。

(3)50対1〜100対1の補助体制加算の施設基準

算定するには、以下の施設基準を満たしている必要があります。

  1. 15対1〜40対1の補助体制加算の施設基準を満たしていること。
  2. 年間の緊急入院患者数が100名以上(75対1及び100対1については50名以上)の実績を有する病院であること。

緊急入院患者について緊急入院患者とは、救急搬送により緊急入院した患者及び当該医療機関を受診した以下に掲げる患者様であって、診察の結果、緊急に入院が必要と認めた重症患者のうち、緊急入院した患者数の合計をいいます。

  1. 吐血、喀血または重篤な脱水で全身状態不良の状態
  2. 意識障害又は昏睡
  3. 呼吸不全又は心不全で重篤な状態
  4. 急性薬物中毒
  5. ショック
  6. 重篤な代謝異常(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
  7. 広範囲熱傷、顔面熱傷又は気道熱傷
  8. 外傷、破傷風等で重篤な状態
  9. 緊急手術、緊急カテーテル治療、検査又はt-PA療法必要とする状態
  10. 消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態
  11. 蘇生術を必要とする重篤な状態
  12. その他の重篤な状態であって、医師が診察等の結果、緊急に入院が必要であると認めた重症患者

医師事務作業補助体制加算2の施設基準

医師事務作業補助体制加算1の上記(1)~(3)までのいずれかの基準を満たす保険医療機関において、医師事務作業補助者がそれぞれの区分ごとに配置されていること。

届出を行う地方厚生局HPについて

届出を行う際は、保険医療機関が所在する都道府県を管轄する地方厚生局に別添の「当該施設基準に係る届出書」及び「添付書類」を1部提出する必要があります。

各書式は各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。

届出時に必要な添付文書について

届出を行う際は、下記の書類も提出が必要です。

  1. 医師事務作業補助員の研修計画の概要について確認できる書類
  2. 病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画の写し
  3. 医師事務作業補助者配置の計画書及び規程文書の写し
  4. 電子カルテシステム(オーダリングを含む)について、関連法規に基づいた規程文書の写し
  5. 院内における電子カルテシステム(オーダリングを含む)における「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に規定する真正性、見読性、保存性の確保に係る取組が分かる資料及び各入力項目についての入力権限、許可権限が確認できる一覧表
  6. 第三次救急医療機関、総合周産期母子医療センターを有する医療機関、小児救急医療拠点病院、災害拠点病院、へき地医療拠点病院、地域医療支援病院に該当する場合は、当該保険医療機関がその指定を受けたことが確認できる資料

医師の負担軽減及び処遇改善の計画書について

施設基準として院内に、他職種からなる役割分担推進のための委員会または会議を設置して「医師の負担の軽減及び処遇に関する計画」を作成することが必須です。

また、当該委員会または会議には、保険医療機関の管理者が年に1回出席する必要があります。

計画については、現状の勤務状況等を把握して問題点を抽出し、具体的な取組内容と目標達成など以下の項目を含めた医師の負担軽減及び処遇改善に関する計画とします。

  1. 勤務計画上、連続当直を行わない勤務体制の実施
  2. 前日の就業時刻と翌日の始業時刻の間の一定時間の休憩の確保
  3. 予定手術前日の当直や夜勤に対する配慮
  4. 当直翌日の業務内容に対する配慮
  5. 交替勤務制・複数主治医制の実施
  6. 育児・介護休業法第23条第1項、同条第3項または同法24条の規定による措置を活用した短時間正規雇用医師の活用

医師事務作業補助者の研修について

医師事務作業補助者を新たに配置してから6ヶ月間は研修期間として、業務内容について必要な研修(32時間以上)を行わなければなりません。

研修の内容については以下のものになります。

  1. 医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法等の関連法規の概要
  2. 個人情報の保護に関する事項
  3. 当該医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語等
  4. 診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力について
  5. 電子カルテシステムについて

■通則

(1)医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制として、次の体制を整備していること。なお、総合入院体制加算や急性期看護補助体制加算、地域医療体制確保加算等を届け出ている保険医療機関において、医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制又は看護職員の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制を整備する場合は、当該加算に係る体制と合わせて整備して差し支えない。

ア 当該保険医療機関内に、医師の負担の軽減及び処遇の改善に関し、当該保険医療機関に勤務する医師の勤務状況を把握し、その改善の必要性等について提言するための責任者を配置する。

イ 特別の関係にある保険医療機関での勤務時間も含めて、医師の勤務時間及び当直を含めた夜間の勤務状況を把握している。その上で、業務の量や内容を勘案し、特定の個人に業務負担が集中しないよう配慮した勤務体系を策定し、職員に周知徹底している。

ウ 当該保険医療機関内に、多職種からなる役割分担推進のための委員会又は会議(以下この項において「委員会等」という。)を設置し、「医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」を作成する。当該委員会等は、当該計画の達成状況の評価を行う際、その他適宜必要に応じて開催している。また、当該委員会等において、当該保険医療機関の管理者が年1回以上出席すること。なお、当該委員会等は、当該保険医療機関における労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第19条に規定する安全衛生委員会等、既存の委員会を活用することで差し支えない。

エ ウの計画は、現状の勤務状況等を把握し、問題点を抽出した上で、具体的な取組み内容と目標達成年次等を含めた医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画とする。また、当該計画を職員に対して周知徹底している。

オ 当該計画には以下の項目を含む。医師と医療関係職種、医療関係職種と事務職員等における役割分担の具体的内容(例えば、初診時の予診の実施、静脈採血等の実施、入院の説明の実施、検査手順の説明の実施、服薬指導など)について計画に記載し、医療機関内の職員に向けて周知徹底するとともに、ウに規定する委員会等で取組状況を定期的に評価し、見直しを行う。

カ 当該計画には、医師の勤務体制等に係る取組について、次に掲げる項目のうち少なくとも2項目以上を含んでいる。

  1. 勤務計画上、連続当直を行わない勤務体制の実施
  2. 前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間の一定時間の休息時間の確保(勤務間インターバル)
  3. 予定手術前日の当直や夜勤に対する配慮
  4. 当直翌日の業務内容に対する配慮
  5. 交替勤務制・複数主治医制の実施
  6. 育児・介護休業法第23条第1項、同条第3項又は同法第24条の規定による措置を活用した短時間正規雇用医師の活用

キ 医師の負担の軽減及び処遇の改善に関する取組事項を当該保険医療機関内に掲示する等の方法で公開する。

(2)(1)のウの計画に基づき、診療科間の業務の繁閑の実情を踏まえ、医師事務作業補助者」を、15対1補助体制加算の場合は補助体制加算の場合は20床ごとに1名以上、25対1補助体制加算の場合は25床ごとに1名以上、30対1補助体制加算の場合は30床ごとに1名以上、40対1補助体制加算の場合は40床ごとに1名以上、50対1補助体制加算の場合は50床ごとに1名以上、75対1補助体制加算の場合は75床ごとに1名以上、100対1補助体制加算の場合は100床ごとに1名以上配置している。また、当該医師事務作業補助者は、雇用形態を問わないが、当該保険医療機関の常勤職員と同じ勤務時間数以上の勤務を行う職員である。なお、当該職員は、医師事務作業補助に専従する職員の常勤換算による場合であっても差し支えない。ただし、当該医療機関において医療従事者として勤務している看護職員を医師事務作業補助者として配置することはできない。

(3)保険医療機関で策定した勤務医負担軽減策を踏まえ、医師事務作業補助者を適切に配置し、医師事務作業補助者の業務を管理・改善するための責任者を置く。当該責任者は適宜勤務医師の意見を取り入れ、医師事務作業補助者の配置状況や業務内容等について見直しを行い、実際に勤務医の事務作業の軽減に資する体制を確保することに努める。なお、医師事務作業補助者が実際に勤務する場所については、業務として医師の指示に基づく医師の事務作業補助を行う限り問わないことから、外来における事務補助や、診断書作成のための部屋等における勤務も可能である。ただし、医師事務作業補助体制加算1を算定する場合は、医師事務作業補助者の延べ勤務時間数の8割以上の時間において、医師事務作業補助の業務が病棟又は外来において行われており、当該業務の内容・場所・時間等が適切に記録されている。なお、医師の指示に基づく診断書作成補助、診療録の代行入力及び医療の質の向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、医師等の教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)に限っては、当該保険医療機関内における実施の場所を問わず、病棟又は外来における医師事務作業補助の業務時間に含めることができる。

(4)当該責任者は、医師事務作業補助者を新たに配置してから6か月間は研修期間として、業務内容について必要な研修を行う。なお、6か月の研修期間内に32時間以上の研修(医師事務作業補助者としての業務を行いながらの職場内研修を含む。)を実施するものとし、当該医師事務作業補助者には実際に医師の負担軽減及び処遇の改善に資する業務を行わせるものである。研修の内容については、次の項目に係る基礎知識を習得すること。また、職場内研修を行う場合には、その実地作業における業務状況の確認及び問題点に対する改善の取組みを行う。

ア 医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法等の関連法規の概要
イ 個人情報の保護に関する事項
ウ 当該医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語等
エ 診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力
オ 電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む。)

当該責任者は、医師事務作業補助者に対する教育システムを作成していることが望ましい。

(5)医療機関内に次の診療体制がとられ、規程を整備している。

ア 医師事務作業補助者の業務範囲について、「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」にある、「2役割分担の具体例(1)医師、看護師等の医療関係職と事務職員等との役割分担1)書類作成等」に基づく院内規程を定めており、個別の業務内容を文書で整備している。

イ 診療記録(診療録並びに手術記録、看護記録等)の記載について、「診療録等の記載について」等に沿った体制であり、当該体制について、規程を文書で整備している。

ウ 個人情報保護について、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に準拠した体制であり、当該体制について、規程を文書で整備している。

エ 電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む。)について、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等に準拠した体制であり、当該体制について、規程を文書で整備している。特に、「成りすまし」がないよう、電子カルテシステムの真正性について十分留意している。医師事務作業補助者が電子カルテシステムに入力する場合は代行入力機能を使用し、代行入力機能を有しないシステムの場合は、業務範囲を限定し、医師事務作業補助者が当該システムの入力業務に携わらない。

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