2024年|排尿自立支援加算の算定要件と施設基準について

排尿自立支援加算は、排尿に関するケアに係る専門的知識を有した多職種からなるチーム(排尿ケアチーム)を設置し、患者さんの診療を担う医師、看護師等が、排尿ケアチームと連携して、排尿自立の可能性及び下部尿路機能を評価し、排尿誘導等の保存療法、リハビリテーション、薬物療法等を組み合わせるなど、下部尿路機能の回復のための包括的なケア(包括的排尿ケア)を行った場合に、週1回に限り12週を限度として以下の点数を算定します。

A251 排尿自立支援加算(週1回) 200点

排尿誘導とは、排泄の自立や維持を目的にトイレへ誘導することであり、認知機能やADLの障害による機能性尿失禁に有効とされています。

スポンサーリンク

対象患者について

排尿自立支援加算は、次のいずれかに当てはまる患者さんに対して算定できます。

尿道カテーテル抜去後に、「尿失禁」「尿閉」等の下部尿路機能障害の症状がある患者さん

尿道カテーテル留置中の患者さんが、尿道カテーテル抜去後に下部尿路機能障害を起こす可能性がある場合

尿道カテーテルとは、尿を排出させるために尿道から膀胱へ挿入するチューブのことです。持続的に尿を排出させる場合、チューブ先端の小さな風船を膀胱内で膨らませ、チューブが自然に抜けないように固定し、挿入したままの状態にします。

失禁によるおむつ交換や複数回の導尿などの介護者の負担が少ないというメリットがありますが、抜去後に尿閉や尿失禁などの排尿障害を起こすことがあります。

カテーテルを長期間留置していた場合、膀胱や尿道の括約筋の働きが低下しているため、しばらく尿失禁を繰り返すことがあるため、カテーテル抜去後は排泄状況の把握と排尿自立に向けた介入が必要となります。

尿閉とは、膀胱内の尿を全く排出できないか、排出するのがきわめて困難な状態で、多量の残尿(300mL以上が目安)が常時ある状態のことをいいます。

看護師の役割について

病棟の看護師等は、ア〜ウの取組を行った上で、排尿ケアチームに相談することとされています。

尿道カテ-テル抜去後の患者さんで、尿失禁や尿閉等の下部尿路機能障害の症状がある患者さんを抽出する。

アの患者さんについて、下部尿路機能評価のための情報収集(排尿日誌、残尿測定等)を行う。

尿道カテーテル挿入中の患者さんについて、尿道カテーテル抜去後の排尿自立の可能性についてを評価し、抜去後に下部尿路機能障害を起こすリスクがあるが、排尿自立の可能性がある患者さんを抽出する。

診療記録の記載について

排尿ケアチームは、上記でお伝えした「看護師の役割について」の内容を基に下部尿路機能障害を評価し、病棟の看護師等と共同して、排尿自立に向けた包括的排尿ケアの計画を策定します。

包括的排尿ケアの内容は、看護師等による排尿誘導や生活指導、必要に応じ理学療法士等による排尿に関連する動作訓練、医師による薬物療法等を組み合わせた計画とすることとされており、排尿ケアチーム、病棟の看護師等及び関係する従事者は、定期的な評価を行います。

上記については診療録等にしっかり記載を行いましょう。退院後に外来において、引き続き、包括的排尿ケアを実施する必要性を認めた場合には、診療録等にその旨を記載しましょう。

尿道カテーテル抜去後の観察項目については、バイタルサイン、排尿時痛の有無、自尿の有無、自尿があるようなら尿量・尿の性状(混濁や血尿など)、残尿感の有無などが挙げられます。

排尿ケアチームの活動内容について

  • 下部尿路機能障害の評価を行う
  • 病棟看護師と共同して排尿自立に向けた包括的排尿ケアの計画を策定する
  • 包括的排尿ケアの実施
  • 包括的排尿ケアの実施中と実施後の定期的な評価を行う
  • スクリーニング及び下部尿路機能評価のための情報収集
  • 排尿ケアに関するマニュアルを作成し、院内に配布する
  • 院内研修を行う

※排尿ケアチームによる関与と、病棟の看護師等による患者さんへの直接的な指導又は援助のうち、いずれか片方のみしか行われなかった週については算定できません。また、排尿が自立し指導を終了した場合についても、以降の算定はできません。

加算が算定できる入院料について

排尿自立支援加算については、以下の入院料に対して加算を算定することが可能です。

  • 一般病棟入院基本料
  • 療養病棟入院基本料
  • 結核病棟入院基本料
  • 精神病棟入院基本料
  • 特定機能病院入院基本料
  • 専門病院入院基本料
  • 障害者施設等入院基本料
  • 有床診療所入院基本料
  • 有床診療所療養病床入院基本料
  • 救命救急入院料
  • 特定集中治療室管理料
  • ハイケアユニット入院医療管理料
  • 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
  • 小児特定集中治療室管理料
  • 新生児特定集中治療室管理料
  • 総合周産期特定集中治療室管理料
  • 新生児治療回復室入院医療管理料
  • 一類感染症患者入院医療管理料
  • 特殊疾患入院医療管理料
  • 小児入院医療管理料
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
  • 地域包括ケア病棟入院料
  • 特殊疾患病棟入院料
  • 緩和ケア病棟入院料
  • 精神科救急急性期医療入院料
  • 精神科急性期治療病棟入院料
  • 精神科救急・合併症入院料
  • 児童・思春期精神科入院医療管理料
  • 精神療養病棟入院料
  • 認知症治療病棟入院料
  • 特定一般病棟入院料
  • 地域移行機能強化病棟入院料
  • 特定機能病院リハビリテーション病棟入院料

排尿自立支援加算に関する施設基準

(1) 保険医療機関内に、以下から構成される排尿ケアチームが設置されていることが必要です。

下部尿路機能障害がある患者さんの診療について経験がある医師

下部尿路機能障害がある患者さんの看護に従事した経験が3年以上あり、所定の研修を修了した専任の常勤看護師
下部尿路機能障害がある患者さんのリハビリテーション等の経験がある専任の常勤理学療法士又は専任の常勤作業療法士

(2) (1)のアに掲げる医師は、3年以上の勤務経験がある泌尿器科の医師又は排尿ケアに係る適切な研修を修了した者であることが必要です。なお、他の保険医療機関を主たる勤務先とする医師が対診等により当該チームに参画しても大丈夫です。また、ここでいう適切な研修とは、次の事項に該当する研修のことをいいます。

国又は医療関係団体等が主催する研修であること。

下部尿路機能障害の病態、診断、治療、予防及びケアの内容が含まれるものであること。
通算して6時間以上のものであること。

(3) (1)のイに掲げる所定の研修とは、次の事項に該当する研修のことをいいます。

国又は医療関係団体等が主催する研修であること。

下部尿路機能障害の病態生理、その治療と予防、評価方法、排尿ケア及び事例分析の内容が含まれるものであること。
排尿日誌による評価、エコーを用いた残尿測定、排泄用具の使用、骨盤底筋訓練及び自己導尿に関する指導を含む内容であり、下部尿路機能障害患者の排尿自立支援について十分な知識及び経験のある医師及び看護師が行う演習が含まれるものであること。
通算して16時間以上のものであること。

(4) 排尿ケアチームの構成員は、外来排尿自立指導料に規定する排尿ケアチームの構成員と兼任であっても大丈夫です。

(5) 排尿ケアチームは、対象となる患者抽出のためのスクリーニング及び下部尿路機能評価のための情報収集(排尿日誌、残尿測定)等の排尿ケアに関するマニュアルを作成し、療機関内に配布し、院内研修を実施することが必要です。

(6) 包括的排尿ケアの計画及び実施に当たっては、下部尿路機能の評価、治療及び排尿ケアに関するガイドライン等を遵守することとされています。

届出を行う地方厚生局HPについて

届出を行う際は、医療機関が所在する都道府県を管轄する『地方厚生局』に必要書類を提出して申請を行う必要があります。

基本診療料の各書式(令和6年)については、各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。

届出時の留意事項

  • 各月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から当該届出に係る診療報酬を算定することができます。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から算定することができます。
  • 施設基準等の届出に当たっては、原則として郵便による送付をお願いしております。(FAXによる届出はできません。)
  • 届出書は、正本1通(届出書にかかる添付書類を含む)を提出してください。なお、控えとして送付した正本のコピー等を保存してください。
  • 「行政手続きに係る押印を不要とする取扱いについて」により、本ページに掲載されている様式は、令和3年2月1日以降、押印が不要となりました。
タイトルとURLをコピーしました