在宅酸素療法指導管理料とは、在宅酸素療法を行っている入院中以外の患者さんに対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合に算定する診療報酬です。
C103 在宅酸素療法指導管理料
1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 520点
2 その他の場合 2400点
在宅酸素療法は、病状は安定しているが体内に酸素を十分に取り込めない患者様に対して、在宅で酸素吸入を行う治療法です。
在宅酸素療法指導管理料の算定要件
注1 在宅酸素療法を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合に算定する。
注2 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、2を算定する患者について、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、遠隔モニタリングを用いて療養上必要な指導を行った場合は、遠隔モニタリング加算として、150点に当該期間の月数(当該指導を行った月に限り、2月を限度とする。)を乗じて得た点数を、所定点数に加算する。
在宅酸素療法とは
皆さんもご存知の通り、酸素は生体内で必要なエネルギー代謝に利用され私達の生命維持に大きな役割を担っていますが、呼吸器疾患が原因で慢性的に体内の酸素が不足してしまう場合があります。
もしも体内の酸素が不足すると・・・
- 手足の冷え
- 不整脈
- 呼吸困難言語障害
- 視力障害
- チアノーゼ
などの症状が出現したり、呼吸機能が低下することで心臓にも大きな負担をかけることになりますので、酸素を吸入して、酸素不足による身体機能の低下を改善する必要があります。
在宅酸素療法を行うことで、息切れが軽減するため運動量を増やすことができ、筋肉の衰えを予防することができますし、生活の質を向上させることが可能となります。
在宅酸素療法指導管理料の留意事項
(1) チアノーゼ型先天性心疾患に対する在宅酸素療法とは、ファロー四徴症、大血管転位症、三尖弁閉鎖症、総動脈幹症、単心室症などのチアノーゼ型先天性心疾患患者のうち、発作的に低酸素又は無酸素状態になる患者について、発作時に在宅で行われる救命的な酸素吸入療法をいう。この場合において使用される酸素は、小型酸素ボンベ(500リットル以下)又はクロレート・キャンドル型酸素発生器によって供給されるものとする。
(2) 保険医療機関が、チアノーゼ型先天性心疾患の患者について在宅酸素療法指導管理料を算定する場合には、これに使用する小型酸素ボンベ又はクロレート・キャンドル型酸素発生器は当該保険医療機関が患者に提供すること。
(3) 「その他の場合」に該当する在宅酸素療法とは、諸種の原因による高度慢性呼吸不全例、肺高血圧症の患者、慢性心不全の患者のうち、安定した病態にある退院患者及び手術待機の患者又は重度の群発頭痛の患者について、在宅で患者自らが酸素吸入を実施するものをいう。
(4) 「その他の場合」の対象となる患者は、高度慢性呼吸不全例のうち、在宅酸素療法導入時に動脈血酸素分圧55mmHg以下の者及び動脈血酸素分圧60mmHg以下で睡眠時又は運動負荷時に著しい低酸素血症を来す者であって、医師が在宅酸素療法を必要であると認めたもの、慢性心不全患者のうち、医師の診断により、NYHAⅢ度以上であると認められ、睡眠時のチェーンストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう。)が20以上であることが睡眠ポリグラフィー上確認されている症例及び関連学会の診断基準により群発頭痛と診断されている患者のうち、群発期間中の患者であって、1日平均1回以上の頭痛発作を認めるものとする。この場合、適応患者の判定に経皮的動脈血酸素飽和度測定器による酸素飽和度を用いることができる。ただし、経皮的動脈血酸素飽和度測定器、「D223」経皮的動脈血酸素飽和度測定及び「D223-2」終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定の費用は所定点数に含まれており別に算定できない。
(5) 在宅酸素療法指導管理料の算定に当たっては、動脈血酸素分圧の測定を月1回程度実施し、その結果について診療報酬明細書に記載すること。この場合、適応患者の判定に経皮的動脈血酸素飽和度測定器による酸素飽和度を用いることができる。ただし、経皮的動脈血酸素飽和度測定器、経皮的動脈血酸素飽和度測定及び終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定の費用は所定点数に含まれており別に算定できない。
(6) 在宅酸素療法を指示した医師は、在宅酸素療法のための酸素投与方法(使用機器、ガス流量、吸入時間等)、緊急時連絡方法等を装置に掲示すると同時に、夜間も含めた緊急時の対処法について、患者に説明を行うこと。
(7) 在宅酸素療法を実施する保険医療機関又は緊急時に入院するための施設は、次の機械及び器具を備えなければならない。
ア 酸素吸入設備
イ 気管内挿管又は気管切開の器具
ウ レスピレーター
エ 気道内分泌物吸引装置
オ 動脈血ガス分析装置(常時実施できる状態であるもの)
カ スパイロメトリー用装置(常時実施できる状態であるもの)
キ 胸部エックス線撮影装置(常時実施できる状態であるもの)
(8) 在宅酸素療法指導管理料を算定している患者(入院中の患者を除く。)については、「J024」酸素吸入、「J024-2」突発性難聴に対する酸素療法、「J025」酸素テント、「J026」間歇的陽圧吸入法、「J026-3」体外式陰圧人工呼吸器治療、「J018」喀痰吸引、「J018-3」干渉低周波去痰器による喀痰排出及び「J026-2」鼻マスク式補助換気法(これらに係る酸素代も含む。)の費用(薬剤及び特定保険医療材料に係る費用を含む。)は算定できない。
(9) 遠隔モニタリング加算は、以下の全てを実施する場合に算定する。
ア 「その他の場合」の対象で、かつ、日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」の病期分類でⅢ期以上の状態となる入院中の患者以外の患者について、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、情報通信機器を活用して、脈拍、酸素飽和度、機器の使用時間及び酸素流量等の状態について定期的にモニタリングを行った上で、状況に応じ、療養上必要な指導を行った場合に、2月を限度として来院時に算定することができる。
イ 患者の同意を得た上で、対面による診療とモニタリングを組み合わせた診療計画を作成する。当該計画の中には、患者の急変時における対応等も記載し、当該計画に沿ってモニタリングを行った上で、状況に応じて適宜患者に来院を促す等の対応を行う。なお、当該モニタリングの開始に当たっては、患者やその家族等に対し、情報通信機器の基本的な操作や緊急時の対応について十分に説明する。
ウ 当該加算を算定する月にあっては、モニタリングにより得られた臨床所見等及び行った指導内容を診療録に記載すること。
エ 療養上必要な指導はビデオ通話が可能な情報通信機器を用いて、オンライン指針に沿って行うこと。なお、当該診療に関する費用は当該加算の所定点数に含まれる。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断と治療のためのガイドラインで病期は、0期:COPDリスク群、I期:軽症COPD、II期:中等症COPD、III期:重症COPD、 IV期:最重症COPDに分類されています。
適応疾患と適応患者について
チアノーゼ型先天性心疾患の場合
チアノーゼ型先天性心疾患に対する在宅酸素療法とは…
・ファロー四徴症
・大血管転位症
・三尖弁閉鎖症
・総動脈幹症
・単心室症
などのチアノーゼ型先天性心疾患のうち、発作的に低酸素または無酸素状態になる患者さんについて、発作時に在宅で行われる場合に算定します。
その他の場合
その他の場合に該当する在宅酸素療法とは…
・高度慢性呼吸不全
・肺高血圧症
・慢性心不全
のうち、安定した状態にある退院患者さん及び手術待機の患者さん又は重度の郡発頭痛の患者さんについて、在宅で自らが酸素吸入をする場合に算定します。
また、高度慢性呼吸不全患者のうち、在宅酸素療法導入時に動脈血酸素分圧55mmHg以下及びの方及び動脈血酸素分圧60mmHg以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症を起こす人に、医師が在宅酸素療法が必要であると判断した場合に算定します。
慢性呼吸不全を起こす主な疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 肺結核後遺症
- 気管支拡張症
- 間質性肺炎
- じん肺等
慢性心不全で在宅酸素対象者となるもの
以下のいずれかが該当するもの
- N Y H AⅢ度以上であると認められ、睡眠時のチェーンストークス呼吸あり、無呼吸低呼吸指数は20以上であることが睡眠ポリグラフィー上で確認されるもの。
- 郡発頭痛と診断されており、1日平均1回以上頭痛発作を認めるもの。
NYHA心機能分類
Ⅰ度・・・心疾患はあAるが、普通の身体活動では症状がない。
Ⅱ度・・・普通の身体活動(坂道や階段をのぼるなど)で症状がある。
Ⅲ度・・・普通以下の身体活動(平地を歩くなど)でも症状がある。
Ⅳ度・・・安静にしていても、心不全の症状や狭心痛がある。
診療録記載について
在宅酸素療法を指示した医師は…
-
-
- 在宅酸素療法のための酸素投与方法(使用機器、ガス流量、吸入時間など)
- 緊急時連絡方法を伝えている
- 夜間を含めた緊急時の対処法
-
などについて患者様へ説明した旨を記載してきましょう。
カルテ記載例令和1年1月20日より高度慢性呼吸不全急性増悪のためSpO2が87%以下まで低下し、在宅酸素療法の必要性を認めた。現在の病状は安定しておりご自分で自ら管理されており、SpO2も安定して過ごされている。
在宅酸素療養に対して以下の指導を行った
- 酸素吸入の仕方(鼻カヌラの取り扱い)
- 労作時には酸素飽和度90%以上を保つこと(0.5~2L/minまでで調整可)
- 火気を近づけないこと
- 酸素濃縮装置の使用法について
- 緊急時の対処法と連絡先について
診療報酬明細書について
在宅酸素療法指導管理料を算定する場合は、 動脈血酸素分圧の測定を月1回程度実施し、その結果について診療報酬明細書に記載することが必須です。
この場合、適応患者の判定に経皮的動脈血酸素飽和度測定器による酸素飽和度を用いることのできます。
※ただし、経皮的動脈血酸素飽和度測定器及び終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定の費用は、所定点数に含まれるものとします。
経皮的動脈血酸素飽和度 (SPO2) とは
SpO2とは、血液中にどの程度の酸素が含まれているかを示します。 SpO2 の S は Saturation (飽和), P は Pulse (脈), O2 は酸素を示しています。
在宅酸素療法指導管理料に伴う加算
C157 酸素ボンベ加算
酸素ボンベ加算
1 携帯用酸素ボンベ 880点
2 1以外の酸素ボンベ 3950点
酸素ボンベを使用した場合に算定できます。
C158 酸素濃縮装置
酸素濃縮装置加算 4000点
酸素濃縮装置を使用した場合に、3月に3回限り算定できます。
C159 液化酸素装置加算
液化酸素装置加算
1 設置型液化酸素装置 3970点
2 携帯型液化酸素装置 880点
液化酸素装置を使用した場合に算定できます。
C159−2 呼吸同調式デマンドバルブ加算
呼吸同調式デマンドバルブ加算 300点
呼吸同調式デマンドバルブを使用した場合に算定できます。
C171 在宅酸素療法材料加算
在宅酸素療法材料加算
1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 780点
2 その他の場合 100点
当該療法に係る機器を使用した場合に算定できます。
遠隔モニタリング加算の施設基準
-
情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。
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呼吸器疾患の診療につき十分な経験を有する常勤の医師及び看護師が配置されていること。
十分な経験を有する医師とは、呼吸器内科について3年以上の経験を有する常勤医師であり、十分な経験を有する看護師とは、呼吸器内科について3年以上の経験を有する常勤看護師のことをいいます。