2023年|在宅酸素療法指導管理料の算定要件とカルテ記載について

在宅酸素療法指導管理料とは、在宅酸素療法を行っている入院中以外の患者さんに対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合に以下の点数を算定します。

在宅酸素療法は、病状は安定しているが体内に酸素を十分に取り込めない患者様に対して、在宅で酸素吸入を行う治療法です。

C103 在宅酸素療法指導管理料

1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 520点

2 その他の場合 2400点

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在宅酸素療法とは

皆さんもご存知の通り、酸素は生体内で必要なエネルギー代謝に利用され私達の生命維持に大きな役割を担っていますが、呼吸器疾患が原因で慢性的に体内の酸素が不足してしまう場合があります。

もしも体内の酸素が不足すると・・・

  • 手足の冷え
  • 不整脈
  • 呼吸困難言語障害
  • 視力障害
  • チアノーゼ

などの症状が出現したり、呼吸機能が低下することで心臓にも大きな負担をかけることになりますので、酸素を吸入して、酸素不足による身体機能の低下を改善する必要があります。

在宅酸素療法を行うことで、息切れが軽減するため運動量を増やすことができ、筋肉の衰えを予防することができますし、生活の質を向上させることが可能となります。

POINTHome Oxygen Therapyの頭文字をとって「HOT(ホット)」とも呼ばれています。

適応疾患と適応患者について

チアノーゼ型先天性心疾患の場合

チアノーゼ型先天性心疾患に対する在宅酸素療法とは…

・ファロー四徴症
・大血管転位症
・三尖弁閉鎖症
・総動脈幹症
・単心室症

などのチアノーゼ型先天性心疾患のうち、発作的に低酸素または無酸素状態になる患者さんについて、発作時に在宅で行われる場合に算定します。

その他の場合

その他の場合に該当する在宅酸素療法とは…

・高度慢性呼吸不全
・肺高血圧症
・慢性心不全

のうち、安定した状態にある退院患者さん及び手術待機の患者さん又は重度の郡発頭痛の患者さんについて、在宅で自らが酸素吸入をする場合に算定します。

また、高度慢性呼吸不全患者のうち、在宅酸素療法導入時に動脈血酸素分圧55mmHg以下及びの方及び動脈血酸素分圧60mmHg以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症を起こす人に、医師が在宅酸素療法が必要であると判断した場合に算定します。

慢性呼吸不全を起こす主な疾患

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 肺結核後遺症
  • 気管支拡張症
  • 間質性肺炎
  • じん肺等
動脈血酸素分圧(どうみゃくけつさんそぶんあつ/PaO2)とは、動脈血中の酸素分圧のことで、動脈血ガス分析で測定することができます。

慢性心不全で在宅酸素対象者となるもの

以下のいずれかが該当するもの

  • N Y H AⅢ度以上であると認められ、睡眠時のチェーンストークス呼吸あり、無呼吸低呼吸指数は20以上であることが睡眠ポリグラフィー上で確認されるもの。

NYHA心機能分類

Ⅰ度・・・心疾患はあAるが、普通の身体活動では症状がない。
Ⅱ度・・・普通の身体活動(坂道や階段をのぼるなど)で症状がある。
Ⅲ度・・・普通以下の身体活動(平地を歩くなど)でも症状がある。
Ⅳ度・・・安静にしていても、心不全の症状や狭心痛がある。

  • 郡発頭痛と診断されており、1日平均1回以上頭痛発作を認めるもの。

診療録記載について

在宅酸素療法を指示した医師は…

      • 在宅酸素療法のための酸素投与方法(使用機器、ガス流量、吸入時間など)
      • 緊急時連絡方法を伝えている
      • 夜間を含めた緊急時の対処法

などについて患者様へ説明した旨を記載してきましょう。

カルテ記載例令和1年1月20日より高度慢性呼吸不全急性増悪のためSpO2が87%以下まで低下し、在宅酸素療法の必要性を認めた。現在の病状は安定しておりご自分で自ら管理されており、SpO2も安定して過ごされている。

在宅酸素療養に対して以下の指導を行った

  • 酸素吸入の仕方(鼻カヌラの取り扱い)
  • 労作時には酸素飽和度90%以上を保つこと(0.5~2L/minまでで調整可)
  • 火気を近づけないこと
  • 酸素濃縮装置の使用法について
  • 緊急時の対処法と連絡先について

診療報酬明細書について

在宅酸素療法指導管理料を算定する場合は、 動脈血酸素分圧の測定を月1回程度実施し、その結果について診療報酬明細書に記載することが必須です。

この場合、適応患者の判定に経皮的動脈血酸素飽和度測定器による酸素飽和度を用いることのできます。

※ただし、経皮的動脈血酸素飽和度測定器及び終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定の費用は、所定点数に含まれるものとします。

経皮的動脈血酸素飽和度 (SPO2) とは?
SpO2とは、血液中にどの程度の酸素が含まれているかを示します。 SpO2 の S は Saturation (飽和), P は Pulse (脈), O2 は酸素を示しています。

在宅酸素療法指導管理料に伴う加算

C157 酸素ボンベ加算

酸素ボンベ加算

1 携帯用酸素ボンベ 880点

2 1以外の酸素ボンベ 3950点

酸素ボンベを使用した場合に算定できます。

C158 酸素濃縮装置

酸素濃縮装置加算 4000点

酸素濃縮装置を使用した場合に、3月に3回限り算定できます。

C159 液化酸素装置加算

液化酸素装置加算

1 設置型液化酸素装置 3970点

2 携帯型液化酸素装置 880点

液化酸素装置を使用した場合に算定できます。

C159−2 呼吸同調式デマンドバルブ加算

呼吸同調式デマンドバルブ加算 300点

呼吸同調式デマンドバルブを使用した場合に算定できます。

C171 在宅酸素療法材料加算

在宅酸素療法材料加算

1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 780点

2 その他の場合 100点

当該療法に係る機器を使用した場合に算定できます。

遠隔モニタリング加算

厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生局長等に届け出た保険医療機関にて「その他の場(2400点)」を算定する患者さんについて、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、遠隔モニタリングを用いて療養上必要な指導を行った場合は、遠隔モニタリング加算として150点に当該期間の月数(指導を行った月に限り2月を限度)をかけた点数を、所定点数に加算します。

遠隔モニタリング加算の施設基準

  1. 情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。

  2. 呼吸器疾患の診療につき十分な経験を有する常勤の医師及び看護師が配置されていること。

十分な経験を有する医師とは、呼吸器内科について3年以上の経験を有する常勤医師であり、十分な経験を有する看護師とは、呼吸器内科について3年以上の経験を有する常勤看護師のことをいいます。

遠隔モニタリング加算は、以下の全てを実施する場合に算定します。

  1. 「その他の場合」の対象で、日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」の病期分類でⅢ期以上の状態となる患者さんについて、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、情報通信機器を活用して、脈拍・酸素飽和度・機器の使用時間及び酸素流量等の状態について定期的にモニタリングを行った上で、状況に応じ、療養上必要な指導を行った場合に、2月を限度として来院時に算定することができる。
  2. 患者さんの同意を得た上で、対面による診療とモニタリングを組み合わせた診療計画を作成する。当該計画の中には、患者さんの急変時における対応等も記載し、当該計画に沿ってモニタリングを行った上で、状況に応じて適宜患者に来院を促す等の対応を行う。なお、当該モニタリングの開始に当たっては、ご本人やその家族等に対し、情報通信機器の基本的な操作や緊急時の対応について十分に説明する。
  3. 算定する月にあっては、モニタリングにより得られた臨床所見等及び行った指導内容を診療録に記載すること。
  4. 療養上必要な指導はビデオ通話が可能な情報通信機器を用いて、厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って行うこと。なお、当該診療に関する費用は当該加算の所定点数に含まれており、オンライン診療料を算定することはできない。

届出を行う地方厚生局HPについて

届出を行う際は、保険医療機関が所在する都道府県を管轄する地方厚生局に必要書類を1部提出する必要があります。

各書式は各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。

併用算定不可のもの

  • J024 酸素吸入
  • J024−2 突発性難聴に対する酸素療法
  • J025 酸素テント
  • J026 間歇的陽圧吸入法
  • J026−3 対外式陰圧人工呼吸器治療
  • J018 喀痰吸引
  • J018−3 干渉低周波去痰器
  • J026−2 鼻マスク式補助換気法

在宅酸素の注意点

酸素療法で息切れなどの症状は緩和しますが、吸う量を多くしたり少なくすると、副作用が出たり十分な効果を得ることができませんので医師の指示を守ることが大切です。

特に「火の管理」には十分な注意が必要です。

現在でも火災や火傷を起こしたという報告がありますので、その点の管理などについてもしっかり指導し、診療録に記載することが大切です。

在宅酸素療法を受けている患者やその家族等にご注意いただきたい事項

在宅酸素療法を受けている患者やその家族等は、酸素吸入時の火気の取り扱い等について、以下の点を十分に理解して、酸素濃縮装置等をご使用下さい。

  1. 高濃度の酸素を吸入中に、たばこ等の火気を近づけるとチューブや衣服等に引火し、重度の火傷や住宅の火災の原因となります。
  2. 酸素濃縮装置等の使用中は、装置の周囲2m以内には、火気を置かないで下さい。特に酸素吸入中には、たばこを絶対に吸わないで下さい。
  3. 火気の取扱いに注意し、取扱説明書どおりに正しく使用すれば、酸素が原因でチューブや衣服等が燃えたり、火災になることはありませんので、過度に恐れることなく、医師の指示どおりに酸素を吸入して下さい。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html)

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