2023年|在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の算定とカルテ記載

睡眠時無呼吸

在宅持続陽圧呼吸療法とは「睡眠時無呼吸症候群」又は「慢性心不全」の患者さんについて、在宅にて実施する呼吸療法です。

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が発生する疾患です。

在宅持続陽圧呼吸療法を行っている入院中以外の患者さんに対して、在宅持続陽圧呼吸療法に関する指導管理を行った場合に以下の点数を算定することができます。

在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料1  2250点

在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2    250点

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在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料1の対象者

以下の全ての基準に該当する方が算定の対象となります。

  • 慢性心不全患者のうち、医師の診断により、NYHAⅢ度以上であると認められ、睡眠時にチェーンストークス呼吸がみられ、 無呼吸低呼吸指数が 20 以上であることが睡眠ポリグラフィー上確認されているもの

心不全の重症度を表すNYHA心機能分類

NYHAⅠ度(無症候性)
心臓に疾患があるが、日常生活では症状が現れない。
NYHAⅡ度(軽症)
安静時には症状が現れないが、日常生活の労作で症状が現れる。
NYHAⅢ度 (中等症~重症)
安静時には症状が現れないが、歩くなど軽い労作でも症状が現れる。
NYHAⅣ度(難治性)
安静時にも症状が現れ、ごく軽い労作で症状が悪化する。
慢性心不全とは・・・心臓は体の隅々まで「血液を送り出すポンプ」としての役割を担っています。しかし、さまざまな心臓病が原因となって、脳・肝臓・腎臓などの臓器に十分な血液や栄養を送ることができなくなることがあります。この状況を「心不全」と呼びます。さらにこの状態が長期間にわたって起こり次第に進行していく時、この病気を「慢性心不全」といいます。
  • CPAP療法を実施したにもかかわらず、無呼吸低呼吸指数が15 以下にならない者に対してASV療法を実施したもの

在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の対象者

以下のいずれかの基準に該当する方が対象となります。

  • 慢性心不全患者のうち、医師の診断により、NYHAⅢ度以上であると認められ、睡眠時にチェーンストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数が20以上であることが睡眠ポリグラフィー上確認されているもので、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料1の対象患者以外にASV療法を実施した場合

ASV療法とはASV療法とは、鼻に装着したマスクを介して自宅で就寝中に陽圧呼吸を行い、チェーン・ストークス呼吸を抑えて心不全を治療するものです。

  • 心不全である者のうち、日本循環器学会・日本心不全学会によるASV適正使用に関するステートメントに留意した上で、ASV 療法を継続せざるを得ない場合
  • 以下の(イ)から(ハ)までの全ての基準に該当する方は対象となります。
    (イ) 無呼吸低呼吸指数が20 以上の方
    (ロ) 日中の傾眠、起床時の頭痛等の自覚症状が強く、日常生活に支障をしたしている方
    (ハ) 睡眠ポリグラフィー上、頻回の睡眠時無呼吸が原因で、睡眠の分断化、深睡眠が著しく減少又は欠如し、持続陽圧呼吸療法により睡眠ポリグラフィー上、睡眠の分断が消失、深睡眠が出現し、睡眠段階が正常化する場合
    ※ただし、無呼吸低呼吸指数が 40 以上である患者については、(ロ)の要件を満たせば対象患者となります。

POINT在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料については、当該治療の開始後最長2か月間の治療状況を評価し、当該療法の継続が可能であると認められる症例についてのみ、引き続き算定の対象とします。

カルテ記載について

カルテには在宅持続陽圧呼吸療法を導入した根拠、継続が必要だと判断される理由、治療経過などをしっかり記載するようにしましょう。

カルテ記載例
A)#1.睡眠時無呼吸症候群
令和4年1月10日及び11日に睡眠時ポリグラフィーにて 45回/時の無呼吸・低呼吸あり、昼間の過度の眠気および重度の睡眠時無呼吸症候群が認められ、日常生活に支障をきたしておりCPAP療法を開始とした。
日中の傾眠など日常生活への支障が軽減するため、継続治療を行っている。
現在の平均AHIは3.1(1/26-2-25までの測定)とかなり改善しており、症状も改善している。装着日数は30日、平均使用時間は約7時間と問題なく装着されている。
引き続き治療が判断とし、継続とした。

  • 初回の指導管理年月日:〇○年〇月〇日
  • 直近の無呼吸低呼吸指数:2.2
  • 睡眠ポリグラフィー実施年月日
  • 算定日の自覚症状
  • 療法の継続が可能であると認める理由(2回目以降)

装置の貸し出しについて

保険医療機関が在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を算定する場合には、持続陽圧呼吸療法装置は当該保険医療機関が患者さんに貸し出します。

在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算について

在宅持続陽圧呼吸療法を行っている患者さん(入院中以外)に対して、持続陽圧呼吸療法用治療器を使用した場合に、3月に3回に限り、以下の点数を加算します。

1 ASVを使用した場合  3750点

2 CPAPを使用した場合 1000点

在宅持続陽圧呼吸療法材料加算について

在宅持続陽圧呼吸療法を行っている患者さん(入院中以外)に対して、当該療法に係る機器を使用した場合に、3月に3回に限り、以下の点数を加算します。

在宅持続陽圧呼吸療法材料加算  100点

遠隔モニタリング加算について

遠隔モニタリング加算は、以下の全てを実施する場合に算定します。

算定要件

「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2」の対象患者であり、持続陽圧呼吸療法(CPAP)を実施している入院中の患者以外について、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、使用時間等の着用状況、無呼吸低呼吸指数等がモニタリング可能な情報通信機器を活用して、定期的なモニタリングを行った上で、状況に応じて療養上必要な指導を行った場合又は患者の状態を踏まえた療養方針について診療録に記載した場合に、 2月を限度として来院時に算定することができる。

診療計画の作成

患者の同意を得た上で、対面による診療とモニタリングを組み合わせた診療計画を作成する。当該計画の中には、患者の急変時における対応等も記載し、当該計画に沿ってモニタリングを行った上で、状況に応じて適宜患者に来院を促す等の対応を行う。

診療録の記載について

当該加算を算定する月にあっては、モニタリングにより得られた臨床所見等を診療録に記載しており、また、必要な指導を行った際には、当該指導内容を診療録に記載していること。

診療方法について

療養上必要な指導は電話又はビデオ通話が可能な情報通信機器を用いて行う。当該情報通信機器を用いて行う場合は、厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って行うこと。なお、当該診療に関する費用は当該加算の所定点数に含まれているため別に算定はできません。

施設基準について

電話以外による指導を行う場合は、情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。(地方厚生局への届け出が必要です)

届出を行う地方厚生局HPについて

届出を行う際は、保険医療機関が所在する都道府県を管轄する地方厚生局に必要書類を1部提出する必要があります。

各書式は各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。

レセプト請求時の記載要領

レセプト請求時には診療報酬請求書に以下の記載が必要です。

  1. 一連の治療機関における初回の指導管理年月日(レセプトコード:850100143)
  2. 直近の無呼吸低呼吸指数(レセプトコード:842100047)
  3. 睡眠時ポリグラフィー上の所見(レセプトコード:830100099)
  4. 睡眠ポリグラフィー実施年月日(レセプトコード:850100144)
  5. 算定日の自覚症状(レセプトコード:830100100)
  6. 療法の継続が可能であると認める理由(2回目以降)(レセプトコード:830100101)
  7. 遠隔モニタリング加算を算定する場合は前回算定日(レセプトコード:830100101)
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