【2024年】認知症ケア加算の算定要件と施設基準のついて

厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者さんであって、別に厚生労働大臣が定めるものに対して必要なケアを行った場合に、当該基準に係る区分に従い、患者さんが入院した日から起算し以下の点数を算定します。

A247 認知症ケア加算(1日につき)

認知症ケア加算1

イ 14日以内の期間 160点

ロ 15日以上の期間 30点

認知症ケア加算2

イ 14日以内の期間 100点

ロ 15日以上の期間 25点

認知症ケア加算3

イ 14日以内の期間 40点

ロ 15日以上の期間 10点

認知症ケア加算1を算定する場合は、精神科リエゾンチーム加算は別に算定できません。

身体的拘束を実施した日は、所定点数の100分の60に相当する点数により算定します。

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認知症ケア加算1の算定要件

認知症ケアに係る専門知識を有した多職種からなるチーム(認知症ケアチーム」)が患者さんの状況を把握・評価するなど当該患者に関与し始めた日から算定できることとし、入院期間に応じ所定点数を算定します。

患者を診療する医師、看護師等は、認知症ケアチームと連携し、病棟職員全体で以下の対応に取り組む必要があります。

  1. 患者さんの入院前の生活状況等を情報収集し、その情報を踏まえたアセスメントを行い、看護計画を作成する。その際、行動・心理症状がみられる場合には、その要因をアセスメントし、症状の軽減を図るための適切な環境調整や患者とのコミュニケーションの方法等について検討する必要があります。
  2. 計画に基づき認知症症状を考慮したケアを実施し、その評価を定期的に行う。身体的拘束を実施した場合は、解除に向けた検討を少なくとも1日に1度は行う必要があります。
  3. 計画作成の段階から、退院後に必要な支援について、患者家族を含めて検討し、円滑な退院支援となるよう取り組む必要があります。
  4. 「1」から「3」までについて診療録等に記載する必要があります。

認知症ケアチームは、以下の取組を通じ、当該保険医療機関における認知症ケアの質の向上を図る必要があります。

  1. 認知症患者のケアに係るチームによるカンファレンスを週1回程度開催し、症例等の検討を行う必要があります。カンファレンスには、病棟の看護師等が参加し、検討の内容に応じ、患者さんの診療を担う医師等が参加することとされています。
  2. 週1回以上、各病棟を巡回し、病棟における認知症ケアの実施状況を把握し、病棟職員及び患者家族に対し助言等を行います。
  3. 算定対象となっていない患者に関するものを含め、患者さんの診療を担当する医師、看護師等からの相談に速やかに応じ、必要なアセスメント及び助言を実施する必要があります。
  4. 認知症患者さんに関わる職員を対象として、認知症患者のケアに関する研修を定期的に実施する必要があります。

認知症ケア加算2の算定要件

病棟において、看護師等が、当該患者の行動・心理症状等を把握し、対応について看護計画を作成した日から算定できることとし、患者さんの入院期間に応じ所定点数を算定します。

患者さんが入院する病棟の看護師等は、当該患者の行動・心理症状等が出現し、あるいは出現すると見込まれ、身体疾患の治療への影響が見込まれる場合に、症状の軽減を図るための適切な環境調整や患者とのコミュニケーションの方法等を踏まえた看護計画を作成し、当該計画に基づき認知症症状を考慮したケアを実施し、その評価を行うこととされています。

認知症患者さんの診療について十分な経験を有する専任の常勤医師又は認知症患者の看護に従事した経験を5年以上有する看護師であって、認知症看護に係る適切な研修を修了した専任の常勤看護師が、病棟における認知症患者に対するケアの実施状況を定期的に把握し、病棟職員に対し必要な助言等を行うこととされています。

身体的拘束を実施した場合は、1日に1度は解除に向けた検討を行うことが必要です。

認知症ケア加算3の算定要件

認知症ケア加算2のア、イ及びエを満たすことが必要です。

加算が算定できる入院料について

認知症ケア加算については、以下の入院料に対して加算を算定することが可能です。

  • 一般病棟入院基本料
  • 療養病棟入院基本料
  • 結核病棟入院基本料
  • 特定機能病院入院基本料(一般病棟、結核病棟のみ)
  • 専門病院入院基本料
  • 障害者施設等入院基本料
  • 救命救急入院料
  • 特定集中治療室管理料
  • ハイケアユニット入院医療管理料
  • 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
  • 特殊疾患入院医療管理料
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
  • 地域包括ケア病棟入院料
  • 特殊疾患病棟入院料
  • 特定一般病棟入院料
  • 特定機能病院リハビリテーション病棟入院料

対象患者について

認知症ケア加算の算定対象となる患者さんは、「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準の活用について」におけるランクⅢ以上に該当することとされています。ただし、重度の意識障害のある者(JCS(Japan Coma Scale)でⅡ-3(又は30)以上又はGCS(Glasgow Coma Scale)で8点以下の状態にある者)を除きます。

ランクⅢ​ とは、着替えや食事など日常生活動作が難しくなったり、徘徊や大声をあげるなどさまざまな症状、行動がみられます状態です。 これらが日中を中心にみられる場合は「Ⅲa」、夜間を中心とする場合は「Ⅲb」となります。

身体的拘束について

身体的拘束は、抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に患者さんの身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいいます。

入院患者さんに対し、日頃より身体的拘束を必要としない状態となるよう環境を整えることが必要です。また、身体的拘束を実施するかどうかは、職員個々の判断ではなく、患者さんに関わる医師、看護師等、当該患者に関わる複数の職員で検討することが必要です。

やむを得ず身体的拘束を実施する場合であっても、患者の生命及び身体の保護に重点を置いた行動の制限であり、代替の方法が見出されるまでの間のやむを得ない対応として行われるものであることから、できる限り早期に解除するよう努めることが必要です。

身体的拘束を実施するに当たっては、以下の対応を行うことが必要です。

(イ) 実施の必要性等のアセスメント

(ロ) 患者家族への説明と同意
(ハ) 身体的拘束の具体的行為や実施時間等の記録
(ニ) 二次的な身体障害の予防
(ホ) 身体的拘束の解除に向けた検討

身体的拘束を実施することを避けるために、ウ、エの対応をとらず家族等に対し付添いを強要するようなことがあってはなりません。

POINT

身体的拘束を実施した場合の点数については、理由によらず、身体的拘束を実施した日に適用します。この点数を算定する場合は、身体的拘束の開始及び解除した日、身体的拘束が必要な状況等を診療録等に記載することとされています。

認知症ケア加算1の施設基準

(1) 以下から構成される認知症ケアに係るチーム(認知症ケアチーム)が設置されていることが必要です。このうち、イに掲げる看護師については、原則週16時間以上、認知症ケアチームの業務に従事することとされています。

認知症患者の診療について十分な経験を有する専任の常勤医師

認知症患者の看護に従事した経験を5年以上有する看護師であって、認知症看護に係る適切な研修を修了した専任の常勤看護師
認知症患者等の退院調整について経験のある専任の常勤社会福祉士又は常勤精神保健福祉士
なお、アからウまでのほか、患者の状態に応じて、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士が参加することが望ましい。

(2) (1)のアに掲げる医師は、精神科の経験を3年以上有する医師、神経内科の経験を3年以上有する医師又は認知症治療に係る適切な研修を修了した医師であることが必要です。なお、ここでいう適切な研修とは、国、都道府県又は医療関係団体等が主催する研修であり、認知症診断について適切な知識・技術等を修得することを目的とした研修で、2日間、7時間以上の研修期間で、修了証が交付されるものであることとされており、週3日以上常態として勤務、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を行っている専任の非常勤医師(精神科の経験を3年以上有する医師、神経内科の経験を3年以上有する医師又は認知症治療に係る適切な研修を修了した医師に限る)を2名以上組み合わせることにより、常勤医師の勤務時間帯と同じ時間帯にこれらの非常勤医師が配置されている場合には、当該2名以上の非常勤医師が認知症ケアチームの業務に従事する場合に限り、当該基準を満たしていることとみなすことができます。

(3) (1)のイに掲げる認知症看護に係る適切な研修とは、次の事項に該当する研修のことをいいます。

国又は医療関係団体等が主催する研修であること(600 時間以上の研修期間で、修了証が交付されるもの)。

認知症看護に必要な専門的知識・技術を有する看護師の養成を目的とした研修であること。

講義及び演習は、次の内容を含むものであること。

(イ) 認知症の原因疾患・病態及び治療・ケア・予防
(ロ) 認知症に関わる保健医療福祉制度の変遷と概要
(ハ) 認知症患者に特有な倫理的課題と対応方法
(ニ) 認知症看護に必要なアセスメントと援助技術
(ホ) コミュニケーションスキル
(ヘ) 認知症の特性を踏まえた生活・療養環境の調整方法、行動・心理症状(BPSD)への対応
(ト) ケアマネジメント(各専門職・他機関との連携、社会資源の活用方法)
(チ) 家族への支援・関係調整

実習により、事例に基づくアセスメントと認知症看護関連領域に必要な看護実践を含むものであること。

(4) (1)のウに掲げる社会福祉士又は精神保健福祉士は、認知症患者又は要介護者の退院調整の経験のある者又は介護支援専門員の資格を有する者であることが必要です。

(5) 認知症ケアチームは、以下の業務を行うこととされています。

認知症患者のケアに係るカンファレンスが週1回程度開催されており、チームの構成員及び当該患者の入院する病棟の看護師等、必要に応じて当該患者の診療を担う医師などが参加していること。

チームは、週1回以上、各病棟を巡回し、病棟における認知症患者に対するケアの実施状況の把握や病棟職員への助言等を行うこと。

チームにより、身体的拘束の実施基準や鎮静を目的とした薬物の適正使用等の内容を盛り込んだ認知症ケアに関する手順書(マニュアル)を作成し、保険医療機関内に周知し活用すること。なお、認知症ケアの実施状況等を踏まえ、定期的に当該手順書の見直しを行うこと。

チームにより、認知症患者に関わる職員を対象として、認知症患者のケアに関する研修を定期的に実施すること。

(6) 認知症患者に関わる全ての病棟の看護師等は、原則として年に1回、認知症患者のアセスメントや看護方法等について、認知症ケアチームによる研修又は院外の研修を受講することが必要です。(既に前年度又は前々年度に研修を受けた看護師等については不要です)また、原則として、全ての病棟(小児科など身体疾患を有する認知症患者が入院しない病棟及び精神病床は除く)に、認知症ケア加算2の(4)に掲げる認知症患者のアセスメントや看護方法等に係る適切な研修又は院内研修を受けた看護師を1名以上配置することが望ましいとされています。

(7) 認知症ケアチームが組織上明確に位置づけられていることが必要です。

認知症ケア加算2の施設基準

(1) 認知症患者の診療について十分な経験を有する専任の常勤医師又は認知症患者の看護に従事した経験を5年以上有する看護師であって、認知症看護に係る適切な研修を修了した専任の常勤看護師を配置されていることが必要です。

(2) (1)に掲げる医師については、1の(2)を満たすものであること。また、(1)に掲げる認知症看護に係る適切な研修については、認知症ケア加算1の(3)の例による。

(3) 原則として、全ての病棟(小児科など身体疾患を有する認知症患者が入院しない病棟及び精神病床は除く。)に、認知症患者のアセスメントや看護方法等に係る適切な研修を受けた看護師を3名以上配置することが必要です。

(4) (3)に掲げる認知症患者のアセスメントや看護方法等に係る適切な研修とは、次の事項に該当する研修のことをいいます。ただし、(3)に掲げる3名以上の看護師のうち1名については、次の事項に該当する研修を受けた看護師が行う認知症患者のアセスメントや看護方法等に係る院内研修の受講をもって満たすものとして差し支えありません。

国、都道府県又は医療関係団体等が主催する研修であること(修了証が交付されるもの)。

認知症看護に必要な専門的知識・技術を有する看護師の養成を目的とした研修であること。

講義及び演習は、次の内容について9時間以上含むものであること。

(イ) 認知症の原因疾患と病態・治療
(ロ) 入院中の認知症患者に対する看護に必要なアセスメントと援助技術
(ハ) コミュニケーション方法及び療養環境の調整方法
(ニ) 行動・心理症状(BPSD)、せん妄の予防と対応法
(ホ) 認知症に特有な倫理的課題と意思決定支援

(5) (1)の医師又は看護師は、病棟における認知症患者に対するケアの実施状況を定期的に把握し、病棟職員に対して必要な助言等を行うことが必要です。

(6) (1)の医師又は看護師を中心として、身体的拘束の実施基準や鎮静を目的とした薬物の適正使用等の内容を盛り込んだ認知症ケアに関する手順書(マニュアル)を作成し、保険医療機関内に周知し活用することとされています。

(7) (1)の医師又は看護師を中心として、認知症患者に関わる職員に対し、少なくとも年に1回は研修や事例検討会等を実施することとされています。

認知症ケア加算3の施設基準

(1) 認知症ケア加算2の(3)及び(4)の施設基準を満たしていることが必要です。

(2) 身体的拘束の実施基準や鎮静を目的とした薬物の適正使用等の内容を盛り込んだ認知症ケアに関する手順書(マニュアル)を作成し、保険医療機関内に周知し活用することとされています。

(3) 認知症ケア加算2の(3)に掲げる認知症患者のアセスメントや看護方法等に係る適切な研修を受けた看護師を中心として、病棟の看護師等に対し、少なくとも年に1回は研修や事例検討会等を実施することとされています。

届出を行う地方厚生局HPについて

届出を行う際は、医療機関が所在する都道府県を管轄する『地方厚生局』に必要書類を提出して申請を行う必要があります。

基本診療料の各書式(令和6年)については、各地方厚生局のH Pよりダウンロードできます。

届出時の留意事項

  • 各月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から当該届出に係る診療報酬を算定することができます。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から算定することができます。
  • 施設基準等の届出に当たっては、原則として郵便による送付をお願いしております。(FAXによる届出はできません。)
  • 届出書は、正本1通(届出書にかかる添付書類を含む)を提出してください。なお、控えとして送付した正本のコピー等を保存してください。
  • 「行政手続きに係る押印を不要とする取扱いについて」により、本ページに掲載されている様式は、令和3年2月1日以降、押印が不要となりました。
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