厚生局による個別指導の主な指摘事項と対策について(在宅医療編)

個別指導は、新しく開業した医療機関を対象にするものと、既指定を対象とするものに分けられます。

新規指導は、新規指定後概ね半年から1年以内に実施することとされており、既指定の医療機関に対する個別指導の選定理由は、以下の4つに分けられます。

  1. 患者さん、審査支払機関等から診療内容や診療報酬の請求に関する情報提供があり、厚生局が必要と認めた医療機関
  2. 前回の個別指導・新規指導の結果が再指導になった医療機関
  3. 前々年度に集団的個別指導を受け、前年度も高点数である医療機関(上位から)
  4. 監査の結果、戒告・注意となった医療機関や、正当な理由なく集団的個別指導を拒否した医療機関

今回は個別指導で実際に指摘されている主な事例「在宅医療」についてお話したいと思います。

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在宅医療での主な指摘事項

往診料

  • 定期的もしくは計画的に患家又は他の保険医療機関に行って診療をしたものについて算定している。
  • 患家の求めに応じて患家に行ったことについての記録がない。
  • 緊急往診加算について、標榜時間外に行った往診について算定している。
  • 同一の患家とみなす有料老人ホーム等において、2人以上の患者を診療した場合の2人目以降の患者について算定している。

対策POINT

同一建物にある老人ホーム等で2人以上の患者さんに対して往診を行った場合は、2人目以降は「再診料」で算定を行いましょう。また、カルテ記載には必ず「時間」「場所」「本人もしくは看護を行うものからの往診の依頼があった旨」の記載を行いましょう。

【2022年改定】往診料の算定要件と加算・カルテ記載について
往診料は患者さんご本人もしくはご家族やその看護にあたる方から医療機関に対し、 電話などで往診を求められ、医師が往診の必要性があると判断し、速やかに患家へ行き診療を行った場合に以下の点数を算定します。 C000 往診料 72...

在宅患者訪問診療料

  • 医療機関への通院が可能な患者さんに対して算定している。
  • 患者さん又は家族等の署名付の訪問診療に係る同意書が診療録に添付されていない。
  • 計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行っていないものについて算定している。
  • 診療録への訪問診療の計画又は診療内容の要点の記載がない又は不十分である。
  • 診療記録に診療時間(開始時刻及び終了時刻)又は診療場所についての記載がない。
  • 訪問診療の計画及び診療内容の要点の記載が個々の患者さんの状態に応じた記載になっていない。また症状に応じた訪問計画の見直しがなされていない。
  • 看取り加算を算定しているが、 診療内容の要点等の診療録への記載が不十分である。
  • 看取り加算について、事前に患者さん又はその家族等に対して、療養上の不安等を解消するための充分な説明と同意を行っていない。
  • 在宅ターミナルケア加算について、診療録に診療内容の要点等の記載がない。

対策POINT
独歩で家族や介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、通院は容易であると考えられるため、在宅患者訪問診療料は算定できません。訪問診療同意書についても必ず署名をもらい診療記録へ添付しましょう。

2022年|在宅患者訪問診療料の算定要件と加算・カルテ記載
訪問診療(在宅医療)とは、通院が困難な患者さんのもと(お家や老人ホーム等の施設)に出向いて医師が定期的に診療を行い、計画的に治療や医学管理等を行うものです。 在宅で療養を行っている患者さんであって、通院が困難なものに対しご本人...

在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料

  • 診療録への在宅療養計画又は説明の要点等の記載がない又は不十分である。
  • 連絡担当者の氏名、連絡先電話番号等、担当日、緊急時の注意事項並びに往診担当医及び訪問看護担当者の氏名等について、文書により提供していない。
  • 在宅時医学総合管理料に規定する「別に厚生労働大臣が定める状態の患者」に該当しない患者さんについて、C002 の2イにより算定している。

対策POINT

患者さんごとに総合的な在宅療養計画書を作成し、その内容を患者さんや患者さんのご家族及びその看護にあたるものに対して説明し、在宅療養計画書の作成と要点を診療録に記載をしましょう。

2022年|施設入居時等医学総合管理料の点数と算定要件について
「施設入居時等医学総合管理料」とは、有料老人ホーム等の施設に入所している人で身体が不自由であったり、認知症があったりして 通院がすることが困難であるために、定期的な訪問診療を行っている場合に算定することができます。 ただし、総...
2022年|在宅時医学総合管理料の算定要件と施設基準について
厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関にて、在宅療養を行っている患者さん(※通院が困難な方に限る)対して、同意を得た上で計画的な医学管理の下に定期的な訪問診療を行っている場合に、以下...

在宅がん医療総合診療料

  • 診療録記載の項目が他の患者さんと同一で、末期の悪性腫瘍に対応していない。
  • 患者さんの同意を得たことが明らかでない。
【2022年】在宅がん医療総合診療料の算定要件と施設基準について
在宅がん医療総合診療料とは、在宅で療養生活を行っており、認知症や四肢不自由で通院が困難な終末期の悪性腫瘍患者さんに対し算定される診療料です。 定期的な訪問診療及び訪問看護のほかに「処置料」「注射料」「検査料」等が包括され、1週...

訪問看護指示料

  • 訪問看護指示書等の写しを診療録に添付していない。
  • 訪問看護指示書の多数の項目欄への記載がない。
  • 訪問看護指示書の様式に関して「別紙様式16」に準じた様式を使用していない。
訪問看護指示書 様式16

対策POINT

主治医が指定訪問看護の必要性を認めた場合には、診療に基づき速やかに訪問看護指示書及び特別訪問看護指示書を作成しましょう。
また、訪問看護指示書等には、 緊急時の連絡先として、診療を行った保険医療機関の電話番号等を必ず記載した上で、訪問看護ステーションに交付しましょう。

【2022年】訪問看護指示料の算定要件と点数・加算について
訪問看護指示料は、在宅での療養を行っている患者さんであって、病気のために通院による療養が困難な者に対する適切な在宅医療を確保するため、指定訪問看護に関する指示を行うことを評価するものとなっています。 在宅での療養を行っている主...

在宅自己注射指導管理料

  • 当該在宅療養を指示した根拠、指示事項又は指導内容の要点について診療録への記載がない、不適切である又は不十分である。
  • 在宅自己注射の指導内容を詳細に記載した文書を在宅自己注射の導入前に作成したことが確認できない。
  • 導入初期加算について、前医で既に自己注射を導入している患者さんに期間を通算せずに算定している。

対策POINT

在宅自己注射の導入前には、入院または2回以上の外来もしくは往診・訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合のみ算定することが可能となります。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成して患者さんに交付することが必要です。

2022年|在宅自己注射指導管理料の算定要件とカルテ記載について
「在宅自己注射指導管理料」とは、厚生労働大臣が定める注射薬(※1)の自己注射を行っている患者さんに対して、自己注射に関する指導管理を行った場合に以下の点数を算定することができます。 C101 在宅自己注射指導管理料 ...

血糖自己測定器加算

  • 実際に測定をしている回数より多い測定回数の区分で算定している。
  • 血糖自己測定値に基づいた指導を実施していない患者さんに対して算定している。

在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料

  • 在宅療養を指示した根拠、指示事項、指導内容の要点について診療録への記載がない、又は不十分である。
  • 開始の要件を満たしていることが確認できない。
  • 遠隔モニタリング加算について、モニタリングにより得られた臨床所見等について診療録への記載が不十分である。
2023年|在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の算定とカルテ記載
在宅持続陽圧呼吸療法とは「睡眠時無呼吸症候群」又は「慢性心不全」の患者さんについて、在宅にて実施する呼吸療法です。 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)とは、睡眠中に何度も呼吸が止まった...

在宅酸素療法指導管理料

  • 開始の要件を満たしていることが確認できない。
  • 在宅療養を指示した根拠、指示事項、指導内容の要点について診療録への記載がない。

対策POINT
在宅酸素療法を指示した医師は…

  • 在宅酸素療法のための酸素投与方法(使用機器、ガス流量、吸入時間など)
  • 緊急時連絡方法を伝えている
  • 夜間を含めた緊急時の対処法

などについて患者様へ説明した旨を記載してきましょう。

2023年|在宅酸素療法指導管理料の算定要件とカルテ記載について
在宅酸素療法指導管理料とは、在宅酸素療法を行っている入院中以外の患者さんに対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合に以下の点数を算定します。 在宅酸素療法は、病状は安定しているが体内に酸素を十分に取り込めない患者様に対...
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