個別指導は、新しく開業した医療機関を対象にするものと、既指定を対象とするものに分けられます。
新規指導は、新規指定後概ね半年から1年以内に実施することとされており、既指定の医療機関に対する個別指導の選定理由は、以下の4つに分けられます。
- 患者さん、審査支払機関等から診療内容や診療報酬の請求に関する情報提供があり、厚生局が必要と認めた医療機関
- 前回の個別指導・新規指導の結果が再指導になった医療機関
- 前々年度に集団的個別指導を受け、前年度も高点数である医療機関(上位から)
- 監査の結果、戒告・注意となった医療機関や、正当な理由なく集団的個別指導を拒否した医療機関
今回は個別指導で実際に指摘されている主な事例として「診療記録・傷病名」についてお伝えしたいと思います。
診療記録に対する指摘事項
- 診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく必要事項の記載を十分に行うこと。
- 医師による日々の診療内容の記載が個々の患者の状態に応じた記載になっていない。
- 医師の診察に関する記載がなく「薬のみ」「do」等の記載で、投薬等の治療が行われている。
- 訪問診療に係る患者について、薬剤を処方した経緯が診療録で確認できない。
対策POINT「症状」「身体所見」「治療計画」「傷病名(診断名)」と対応する転帰、開始日、終了日等についてしっかり漏れなく記載を行いましょう。診療録の記載がなければ医師法で禁止されている無診察治療とも誤解されかねません。投薬が行われた際も「内服にて血圧コントロールであり内服継続とする」等投薬が行われる根拠の記載も行いましょう。
- 傷病手当金に係る意見書を交付した場合であるにもかかわらず、労務不能に関する意見欄への記載がない。
- 業務災害等に関する欄及び労務不能に関する意見欄について、必要に応じて記載していない。
- 鉛筆で記載している。
- 修正液、修正テープ、塗りつぶし又は貼紙により修正しているため修正前の記載内容が判別できない。
対策POINT紙媒体の記録関しては、ボールペンで行いましょう。また、修正は二重線で行い修正前の記載内容が分かるようにしましょう。
- 保険診療の診療録と保険外診療(自由診療、予防接種、健康診断等)の診療録とを区別して管理していない。
傷病名に対する指摘事項
- 傷病名の開始日、終了日又は転帰の記載がない又は誤っている。
- 傷病名の記載が一部漏れている。
対策POINT「傷病名」欄への記載は、1行に1傷病名を記載し、診療が終了した場合には、傷病名を削除するのではなく、転帰を記載しましょう。
- 医学的な診断根拠がない又は乏しい傷病名の記載がある。
- 傷病名医学的に妥当とは考えられない傷病名の記載がある。
対策POINT検査、投薬等の査定を防ぐ目的で付けられた医学的な診断根拠のない傷病名(いわゆるレセプト病名)が指摘されています。レセプト病名を付けて保険請求する行わず、診療報酬明細書の請求内容を説明する上で傷病名のみでは不十分と考えられる場合には、摘要欄に記載するか、別に症状詳記(病状説明)を作成し診療報酬明細書に添付しましょう。
- 実際には「疑い」の傷病名であるにもかかわらず、確定傷病名として記載している。
- 詳細な記載(急性・慢性、左右の別、部位、詳細な傷病)がない傷病名がある。
- 単なる状態や傷病名ではない事項を傷病名欄に記載している。
- 長期にわたる「疑い」の傷病名
- 長期にわたる急性疾患等の傷病名
- 重複して付与している、又は類似の傷病名
- 整理されていないために傷病名数が多数となっている。
対策POINT現在の診療内容に必要な傷病名以外は適切に整理を行いましょう。例えば、肺炎を疑って胸部X線を行った結果、肺炎が否定的だった場合はその日のうちに「中止」の記載を行い傷病名を残さないようにしましょう。
- 請求事務担当者が傷病名又は傷病名の転帰を記載している。
対策POINT傷病名又は傷病名の転帰は、必ず医師もしくは医師事務作業補助者代行で記載しましょう。
傷病名登録についての要点
- 検査、処方、処置、手術に対する傷病名を記載する。
- 重複した傷病名を整理する。
例)尿路感染症と膀胱炎、高脂血症と高コレステロール血症等
- 疑い病名は継続せず中止とする。
- 部位が必要な病名には必ず部位をつけてください。
例)両アレルギー性結膜炎、右変形性膝関節症、左手背挫創、両下肢動脈硬化症
- 急性疾患を長期で記載しない。(不要な病名は整理する)