「在宅自己注射指導管理料」は、厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者さんに対して、自己注射に関する指導管理を行った場合に算定します。
C101 在宅自己注射指導管理料
在宅自己注射指導管理料の算定要件
注1 別に厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている入院中の患者以外の患者に対して、自己注射に関する指導管理を行った場合に算定する。ただし、同一月に外来腫瘍化学療法診療料又は第6部の通則第6号に規定する外来化学療法加算を算定している患者については、当該管理料を算定できない。
厚生労働大臣が定める注射薬とは
「在宅自己注射指導管理料」「間歇注入シリンジポンプ加算」「持続血糖測定器加算」「注入器用注射針加算」に規定する注射薬には以下のものがあります。
- インスリン製剤
- 性腺刺激ホルモン製剤
- ヒト成長ホルモン剤
- 遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤
- 遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤
- 遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤
- 乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤
- 乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤
- 乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤
- 顆粒球コロニー形成刺激因子製剤
- 性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤
- ソマトスタチンアナログ
- ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体
- グルカゴン製剤
- グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト
- ヒトソマトメジンC製剤
- インターフェロンアルファ製剤インターフェロンベータ製剤
- エタネルセプト製剤
- ペグビソマント製剤スマトリプタン製剤
- グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤
- アダリムマブ製剤
- テリパラチド製剤
- アドレナリン製剤
- ヘパリンカルシウム製剤
- アポモルヒネ塩酸塩製剤
- セルトリズマブペゴル製剤
- トシリズマブ製剤
- メトレレプチン製剤
- アバタセプト製剤
- pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)製剤
- アスホターゼアルファ製剤
- グラチラマー酢酸塩製剤
- セクキヌマブ製剤
- エボロクマブ製剤
- ブロダルマブ製剤
- アリロクマブ製剤
- ベリムマブ製剤
- イキセキズマブ製剤
- ゴリムマブ製剤
- エミシズマブ製剤
- イカチバント製剤
- サリルマブ製剤
- デュピルマブ製剤
- インスリン・グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト配合剤
- ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤
注2 初回の指導を行った日の属する月から起算して3月以内の期間に当該指導管理を行った場合には、導入初期加算として、3月を限度として、580点を所定点数に加算する。
注3 処方の内容に変更があった場合には、注2の規定にかかわらず、当該指導を行った日の属する月から起算して1月を限度として、1回に限り導入初期加算を算定できる。
注4 患者に対し、バイオ後続品に係る説明を行い、バイオ後続品を処方した場合には、バイオ後続品導入初期加算として、当該バイオ後続品の初回の処方日の属する月から起算して3月を限度として、150点を所定点数に加算する。
注5 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、在宅自己注射指導管理料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、1又は2のイ若しくはロの所定点数に代えて、それぞれ1,070点又は566点若しくは653点を算定する。
在宅自己注射指導管理料の留意事項
(1) インターフェロンベータ製剤については、多発性硬化症に対して用いた場合に限り算定する。
(2) インターフェロンアルファ製剤については、C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善(血中HCV RNA量が高い場合を除く。)を目的として単独投与に用いた場合、C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善(セログループ1の血中HCV RNA量が高い場合を除く。)を目的として単独投与に用いた場合、HBe抗原陽性でかつDNAポリメラーゼ陽性のB型慢性活動性肝炎のウイルス血症の改善を目的として単独投与に用いた場合及びHTLV-1関連脊髄症(HAM)に対して用いた場合に限り算定する。なお、ペグインターフェロンアルファ製剤については算定できない。
(3) グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤については、慢性肝疾患における肝機能異常の改善に対して用い、在宅自己注射での静脈内投与について十分な経験を有する患者であって、医師により必要な指導を受けた場合に限り算定する。
(4) 顆粒球コロニー形成刺激因子製剤については、再生不良性貧血及び先天性好中球減少症の患者に対して用いた場合に限り算定する。
(5) アドレナリン製剤については、蜂毒、食物及び毒物等に起因するアナフィラキシーの既往のある患者又はアナフィラキシーを発現する危険性の高い患者に対して、定量自動注射器を緊急補助的治療として用いた場合に限り算定する。
(6) 「1」複雑な場合については、間歇注入シリンジポンプを用いて在宅自己注射を行っている患者について、診察を行った上で、ポンプの状態、投与量等について確認・調整等を行った場合に算定する。この場合、プログラムの変更に係る費用は所定点数に含まれる。
(7) 在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定する。ただし、アドレナリン製剤については、この限りではない。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること。なお、第2節第1款の在宅療養指導管理料の通則の留意事項に従い、衛生材料等については、必要かつ十分な量を支給すること。
(8) 「2」については、医師が当該月に在宅で実施するよう指示した注射の総回数に応じて所定点数を算定する。なお、この場合において、例えば月の途中にて予期せぬ入院等があり、やむを得ずあらかじめ指示した回数が在宅で実施されなかった場合であっても、当該指示回数に応じて算定することができる。ただし、予定入院等あらかじめ在宅で実施されないことが明らかな場合は、当該期間中の指示回数から実施回数を除して算定すること。また、「2」は難病外来指導管理料との併算定は可とする。
(9) 「注2」に規定する導入初期加算については、新たに在宅自己注射を導入した患者に対し、3月に限り、月1回に限り算定する。ただし、処方の内容に変更があった場合は、さらに1回に限り算定することができる。
(10) 「注3」に規定する「処方の内容に変更があった場合」とは、処方された特掲診療料の施設基準等の別表第九に掲げる注射薬に変更があった場合をいう。また、先発バイオ医薬品とバイオ後続品の変更を行った場合及びバイオ後続品から先発バイオ医薬品が同一であるバイオ後続品に変更した場合には算定できない。なお、過去1年以内に処方されたことがある特掲診療料の施設基準等の別表第九に掲げる注射薬に変更した場合は、算定できない。
(11) 「注4」に規定するバイオ後続品導入初期加算については、当該患者に対して、バイオ後続品の有効性や安全性等について説明した上で、バイオ後続品を処方した場合に、当該バイオ後続品の初回の処方日の属する月から起算して、3月に限り、月1回に限り算定する。「バイオ後続品を処方した場合」とは、バイオ後続品の一般的名称で処方した場合(例えば、「○○○○○○(遺伝子組換え)[●●●●●後続1]」と処方した場合をいう。)又はバイオ後続品の販売名で処方した場合(例えば、「●●●●● BS 注射液 含量 会社名」と処方した場合をいう。)をいう。
(12) 「注2」及び「注3」に規定する導入初期加算並びに「注4」に規定するバイオ後続品導入初期加算は、対面診療を行った場合に限り、算定できる。
(13) 在宅自己注射指導管理料を算定している患者の外来受診時(緊急時に受診した場合を除く。)に、当該在宅自己注射指導管理に係る「G000」皮内、皮下及び筋肉内注射、「G001」静脈内注射を行った場合の費用及び当該注射に使用した当該患者が在宅自己注射を行うに当たり医師が投与を行っている特掲診療料の施設基準等の別表第九に掲げる注射薬の費用は算定できない。なお、緊急時に受診した場合の注射に係る費用を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に緊急時の受診である旨を記載すること。
(14) 在宅自己注射指導管理料を算定している患者については、当該保険医療機関において在宅患者訪問診療料(Ⅰ)又は在宅患者訪問診療料(Ⅱ)を算定する日に行った「G000」皮内、皮下及び筋肉内注射、「G001」静脈内注射及び「G004」点滴注射の費用(薬剤及び特定保険医療材料に係る費用を含む。)は算定できない。
(15) 同一月に外来腫瘍化学療法診療料又は第2章第6部の「通則6」に規定する外来化学療法加算を算定している患者の外来受診時に、当該加算に係る注射薬を用いて当該患者に対して自己注射に関する指導管理を行った場合については、当該管理料を算定できない。
(16) トシリズマブ製剤については、皮下注射により用いた場合に限り算定する。
(17) アバタセプト製剤については、皮下注射により用いた場合に限り算定する。
(18) 2以上の保険医療機関が同一の患者について、異なった疾患に対する当該指導管理を行っている場合には、いずれの保険医療機関においても、当該在宅療養指導管理料を算定できる。なお、この場合にあっては、相互の保険医療機関において処方されている注射薬等を把握すること。
(19) ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤については、急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)の既往のある患者又は急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)を発症する危険性の高い患者に対して、筋肉内注射により用いた場合に限り算定する。
(20) 「注5」に規定する情報通信機器を用いた医学指導管理については、オンライン指針に沿って診療を行った場合に算定する。
カルテに記載について
在宅療養指導管理料及び血糖測定器加算を算定する際は、在宅療養を指示した根拠、指示事項、指導内容の要点について診療録への記載が必要です。
Bさんのカルテを例に指導内容例を解説いたします。
A:#糖尿病
1/11 検査所見よりHbA1cが10.3であり、上記と診断しエクア50mg2T2×開始
1/18 血糖値516と高値で内服薬だけでは血糖コントロール困難であり、インスリン加療を開始する
【指導】インスリン導入を行う。慣れるまでは看護師と一緒に行うよう説明した。ランタス6単位から1日1回施行すること、血糖測定を1日1回行うこと、施行前は手を清潔にすること、低血糖の症状と対処法(ぶどう糖内服)について文書を用いて指導した。
1/19 BS:353 1/20 BS:350
1/21 血糖は徐々に落ち着いてきている
【指導】空打ちを2単位してから注射を行うこと、使用済み針は専用のボトルに捨てること、低血糖時はブドウ糖10gを内服すること、インスリン注射は定期的に部位を変えて行うよう指導した。
【在宅自己注射に対する指導】
在宅自己注射に対して以下の指導を行った
・低血糖の症状がある時はブドウ糖10gを内服し、夜間は手の届くところに置くこと
・インスリン注射は定期的に場所を変えて打つこと(腹部及び大腿で)
・使用済みの針は専用のボトルに捨てること
【在宅自己注射が必要な根拠】
血糖の変動が激しく、内服薬だけでは血糖コントロール不可である。インスリン製剤の自己注射でないと血糖が安定しないため、1日1回のインスリン製剤注射が必要と判断した。
【自己血糖測定に対する指導】
血糖値の変動が大きいため、毎日の血糖自己測定を指示し、今月は30回の自己測定を行った。血糖コントロールは不良であり、食事療法の徹底を再度指導した。血糖コントロール不良が続く場合はインスリン製剤の増量を検討する。