2022年|在宅自己注射指導管理料の算定要件とカルテ記載について

在宅自己注射指導管理料

「在宅自己注射指導管理料」とは、厚生労働大臣が定める注射薬(※1)の自己注射を行っている患者さんに対して、自己注射に関する指導管理を行った場合に以下の点数を算定することができます。

C101 在宅自己注射指導管理料

1 複雑な場合 1,230点
2 以外の場合
 イ 月27回以下の場合 650点
 ロ 月28回以上の場合 750点
※実施した回数ではなく、指示した回数で算定します
【2022年改定】
厚生労働大臣が定める施設基準を満たしており、地方厚生局長等に届け出た医療機関において、在宅自己注射指導管理料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、1又は2のイ若しくはロの所定点数に代えて、それぞれ1,070点又は566点若しくは653点を算定します。

POINT在宅自己注射の導入前には、入院または2回以上の外来もしくは往診訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合のみ算定することが可能となります。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成して患者さんに交付することが必要です。

スポンサーリンク

厚生労働大臣が定める注射薬とは

「在宅自己注射指導管理料」「間歇注入シリンジポンプ加算」「持続血糖測定器加算」「注入器用注射針加算」に規定する注射薬には以下のものがあります。

  • インスリン製剤
  • 性腺刺激ホルモン製剤
  • ヒト成長ホルモン剤
  • 遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤
  • 遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤
  • 遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤
  • 乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤
  • 乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤
  • 乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤
  • 顆粒球コロニー形成刺激因子製剤
  • 性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤
  • ソマトスタチンアナログ
  • ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体
  • グルカゴン製剤
  • グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト
  • ヒトソマトメジンC製剤
  • インターフェロンアルファ製剤インターフェロンベータ製剤
  • エタネルセプト製剤
  • ペグビソマント製剤スマトリプタン製剤
  • グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤
  • アダリムマブ製剤
  • テリパラチド製剤
  • アドレナリン製剤
  • ヘパリンカルシウム製剤
  • アポモルヒネ塩酸塩製剤
  • セルトリズマブペゴル製剤
  • トシリズマブ製剤
  • メトレレプチン製剤
  • アバタセプト製剤
  • pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)製剤
  • アスホターゼアルファ製剤
  • グラチラマー酢酸塩製剤
  • セクキヌマブ製剤
  • エボロクマブ製剤
  • ブロダルマブ製剤
  • アリロクマブ製剤
  • ベリムマブ製剤
  • イキセキズマブ製剤
  • ゴリムマブ製剤
  • エミシズマブ製剤
  • イカチバント製剤
  • サリルマブ製剤
  • デュピルマブ製剤
  • インスリン・グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト配合剤
  • ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤

カルテに記載について

在宅療養指導管理料及び血糖測定器加算を算定する際は、在宅療養を指示した根拠、指示事項、指導内容の要点について診療録への記載が必要です。

Bさんのカルテを例に指導内容例を解説いたします。

【自己注射導入前指導例】
A:#糖尿病
1/11 検査所見よりHbA1cが10.3であり、上記と診断しエクア50mg2T2×開始
1/18 血糖値516と高値で内服薬だけでは血糖コントロール困難であり、インスリン加療を開始する
【指導1回目】インスリン導入を行う。慣れるまでは看護師と一緒に行うよう説明した。ランタス6単位から1日1回施行すること、血糖測定を1日1回行うこと、施行前は手を清潔にすること、低血糖の症状と対処法(ぶどう糖内服)について文書を用いて指導した。
1/19 BS:353 1/20 BS:350
1/21 血糖は徐々に落ち着いてきている
【指導2回目】空打ちを2単位してから注射を行うこと、使用済み針は専用のボトルに捨てること、低血糖時はブドウ糖10gを内服すること、インスリン注射は定期的に部位を変えて行うよう指導した。
【在宅自己注射に対する指導】

在宅自己注射に対して以下の指導を行った
・低血糖の症状がある時はブドウ糖10gを内服し、夜間は手の届くところに置くこと
・インスリン注射は定期的に場所を変えて打つこと(腹部及び大腿で)
・使用済みの針は専用のボトルに捨てること
【在宅自己注射が必要な根拠】
血糖の変動が激しく、内服薬だけでは血糖コントロール不可である。インスリン製剤の自己注射でないと血糖が安定しないため、1日1回のインスリン製剤注射が必要と判断した。
【自己血糖測定に対する指導】
血糖値の変動が大きいため、毎日の血糖自己測定を指示し、今月は30回の自己測定を行った。血糖コントロールは不良であり、食事療法の徹底を再度指導した。血糖コントロール不良が続く場合はインスリン製剤の増量を検討する。

導入初期加算

初回の指導を行った日の属する月から起算して3ヶ月以内の期間に当該指導管理を行った場合には、導入初期加算として、3ヶ月を限度として580点を所定点数に加算します。

また、処方の内容に変更があった場合には、当該指導を行った日の属する月から起算して1月を限度として、1回に限り導入初期加算を算定できます。

注意事項処方内容変更の度に算定できますが、過去1年以内に使用した薬剤に変更した場合は算定不可です。
また量の変更は該当せず、一般名に変更があった場合のみ算定可能となります。
例) ランタスソロスター→ヒューマリンR注

POINT導入初期加算を行っている患者さんが保険医療機関を変更した場合は、変更前の保険医療機関から通算して取り扱います。

血糖自己測定器加算

血糖自己測定値に基づく指導を行うため、血糖自己測定器を使用した場合に、3ヶ月に3回に限り以下の点数を加算することができます。

血糖自己測定器加算

  1. 月20回以上測定する場合 350点
  2. 月30回以上測定する場合 465点
  3. 月40回以上測定する場合 580点
  4. 月60回以上測定する場合 830点
  5. 月90回以上測定する場合 1,170点
  6. 月120回以上測定する場合 1,490点
  7. 間歇スキャン式持続血糖測定器によるもの 1,250点

在宅自己注射を毎日行っており、血糖値の変動が激しい患者さんに対して、血糖試験紙を給付し自宅で血糖自己測定を行い、その記録に基づき指導を行った場合に算定します。

「1」〜「4」までについては、次に掲げる患者さんに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため血糖自己測定器を使用した場合に、3ヶ月に3回に限り加算します。

  1. インスリン製剤又はヒトソマトメジンC製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者さん(1型糖尿病の患者及び膵全摘後の患者を除く)
  2. インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者さん(1型糖尿病の患者又は膵全摘後の患者に限る)
  3. 12歳未満の小児低血糖症の患者さん
  4. 妊娠中の糖尿病患者さん又は妊娠糖尿病の患者さん(妊娠中の糖尿病もしくは妊娠糖尿病の患者さんで周産期における合併症のリスクが高いもの)

「5」及び「6」については、次に掲げるものに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため、血糖自己測定器を使用した場合に、3ヶ月に3回に限り加算します。
イ インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者さん(1型糖尿病の患者又は膵全摘後の患者に限る)

  1. 12歳未満の小児低血糖症の患者さん
  2. 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者(妊娠中の糖尿病もしくは妊娠糖尿病の患者さんで周産期における合併症のリスクが高いもの)

「7」については、強化インスリン療法を行っているもの又は強化インスリン療法を行った後に混合型インスリン製剤を1日2回以上使用しているものに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため、間歇スキャン式持続血糖測定器を使用した場合に、3ヶ月に3回に限り加算します。

注1:血糖値の記入したものが必要であり、回数により点数が異なるためコスト算定時は確認が必要。

注2:記録した血糖値の注意内容について、指導要点の記載がカルテに必要。

注入器加算

上記の厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者さんに対して、注射器を処方した場合に注入器加算として300点を加算します。

間歇注入シリンジポンプ加算

上記の厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者さんに対して、間歇注入シリンジポンプを使用した場合に2月に2回に限り以下の点数を加算します。

間歇注入シリンジポンプ加算

1 プログラム付きシリンジポンプ 2500点

2 1以外のシリンジポンプ 1500点

解説!!「間歇注入シリンジポンプ」とは、インスリン又は性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤を間歇的かつ自動的に注入するシリンジポンプをいい、「プログラム付きシリンジポンプ」とは、間歇注入シリンジポンプのうち、基礎注入と独立して追加注入がプログラム可能であり、基礎注入の流量について1日につき24プログラム以上の設定が可能なものをいいます。

持続血糖測定器加算

厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、上記の厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者さんに対して、持続血糖測定器を使用した場合に、2月に2回に限り以下の点数を加算します。

1 間歇注入シリンジポンプと連動する持続血糖測定器を用いる場合

イ 2個以下の場合 1320点

ロ 3個又は4個の場合 2640点

ハ 5個以上の場合 3300点

2 間歇注入シリンジポンプと連動しない持続血糖測定器を用いる場合

イ 2個以下の場合 1320点

ロ 3個又は4個の場合 2640点

ハ 5個以上の場合 3300点

持続血糖測定器加算の施設基準

(1)間歇注入シリンジポンプと連動する持続血糖測定器を用いる場合

  • 当該保険医療機関内に当該測定器の使用につき必要な医師が配置されていること。
  • 当該測定器の使用につき十分な体制が整備されていること。

(2)間歇注入シリンジポンプと連動しない持続血糖測定器を用いる場合

  • 当該保険医療機関内に当該測定器の使用につき必要な医師が配置されていること。
  • 当該測定器の使用につき十分な体制が整備されていること。

注入器用注射針加算

上記の厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者さんに対して、注入器用の注射針を処方した場合に以下の点数を加算します。

注入器用注射針加算

1 治療上の必要があって、1型糖尿病若しくは血友病の患者又はこれらの患者に準ずる状態にある患者に対して処方した場合 200点

2 1以外の場合 130点

「1」は、以下の場合に算定できるものであり、算定する場合は「診療報酬明細書の摘要欄」に次のいずれに該当するかを記載する必要があります。

  • 糖尿病等で1日概ね4回以上自己注射が必要な場合
  • 血友病で自己注射が必要な場合

注入ポンプ加算

在宅における鎮痛療法若しくは悪性腫瘍の化学療法を行っている末期の患さん又は上記の厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者さんに対して、注入ポンプを使用した場合に2ヶ月に2回に限り1250点を加算します。

在宅中心静脈栄養法、在宅成分栄養経管栄養法若しくは在宅小児経管栄養法を行っている患者さんは算定できません。

タイトルとURLをコピーしました