2024年|地方厚生局による集団指導・個別指導・監査について

医療機関が保険診療のルールを守って診療報酬請求を行っているかを監督する機関として、厚生労働省の下部組織として地方厚生局があります。

地方厚生局は、医療機関を対象として「集団指導」「集団的個別指導」「新規個別指導」「個別指導」「監査」を行い、診療行為や診療報酬請求が適切に行われているかを審査し、個別指導では、診療報酬請求に不当があると判断された場合は、受け取った報酬を返還するよう求められます。

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集団指導とは

指導は保険医・保険医療機関の全てが対象となっていて、新規指定時や指定更新時等に行われる講習、講演形式(e- ラーニング実施)で行われます。出席を拒否した場合でも、特にペナルティはありません。

集団的個別指導とは

レセプト1件あたりの平均点数が高い保険医療機関に対し、講習会形式の「集団指導」と医療機関毎の面接形式の「個別指導」で行われるとされています。診療録の持参義務はなく、自主返還(後述)を求められることもありません。

ただし、正当な理由なく集団的個別指導を拒否した場合は、個別指導の対象になります。

新規個別指導とは

開業から概ね6カ月を経過した保険医療機関を対象として実施される個別指導です。

指導日の1カ月前に通知があり、さらに指導日の1週間前に指導の対象となる患者名が通知され、診療所の場合は10名、病院の場合は20名が指定されます。

対象となる患者さんの診療録等の持参義務があります。対象となったレセプトのうち適正でないと判断されたものは、自主返還の対象となります。

ここ数年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い実施が遅れているようです。

 

個別指導とは

第三者からの情報提供があった場合やレセプトが高点数の場合等に実施されるものです。

あらかじめ厚生局から指定された時期の30人分の連続した2ヶ月分のレセプトに基づき面接懇談方式で行われます。正当な理由なく個別指導を拒否した場合は、監査が行われることになります。

個別指導の選定基準

  1. 患者・審査支払機関等から情報提供があり、厚生局が必要としたもの
  2. 前回の個別指導・新規個別指導で「再指導」になったもの、または「経過観察」で改善が見られないもの
  3. 集団的個別指導で前々年度、前年度と高点数が続くのもの(上位から)
  4. 監査の結果、戒告・注意となったもの
  5. 正当な理由なく新規個別指導や集団的個別指導を拒否したもの
  6. その他、指導が必要と認められるもの

個別指導までの流れ

指導日の1カ月前に通知があり、指導の対象となる患者名については、指導日の1週間前に20名、指導日の前日に10名が指定されます。

対象となる患者さんの診療録等の持参を求められます。(対象の医療機関が病院の場合は、当該医療機関で個別指導が実施されます)

個別指導後の流れ

個別指導の結果、診療内容または診療報酬請求に不当があると指摘された事項と同様の診療報酬について、過去1年間について自主返還するように求められます。

自主返還とは、個別指導の結果、診療内容や診療報酬の請求に不当が認められる場合、保険医療機関に対し、自主点検のうえ受領済みの診療報酬を返還することが求められるものです。自主点検したうえで返還した金額が少ない場合には、差し戻されて、地方厚生局が想定している金額の返還を求められることになります。

個別指導後の措置について

個別指導後の措置は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「監査」の4種類となっております。

概ね妥当

診療内容及び診療報酬の請求に関し、概ね妥当適切である場合です。問題なしと判断され追加措置はありません。

経過観察

診療内容又は診療報酬の請求に関し、適正を欠く部分が認められるものの、その程度が軽微で、診療担当者等の理解も十分得られており、かつ、改善が期待できる場合が「経過観察」とされます。

経過観察の結果、改善が認められないときは、当該保険医療機関等に対して再指導が行われます。

再指導

診療内容又は診療報酬の請求に関し、適正を欠く部分が認められ、再度指導を行わなければ改善状況が判断できない場合が「再指導」とされます。

不正又は不当が疑われ、患者さんから受療状況等の聴取が必要と考えられる場合は、速やかに患者調査を行い、その結果を基に当該保険医療機関等の再指導が行われます。患者調査の結果、不正又は著しい不当が明らかとなった場合は、再指導を行うことなく当該保険医療機関等に対して「監査要綱」に定めるところにより監査が行われます。

監査

監査は、保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、架空請求、付増請求、振替請求などの不正請求や著しい不当があったことが疑われる場合や、前述の様に個別指導の結果「要監査」とされた保険医療機関に対し、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置をとる目的で行われます。監査の結果次第では、保険指定を取り消されるケースもあります。

架空請求とは

実際には診療していないのに請求をした場合

付増請求とは

診療行為の回数、日数、数量等を実際よりも多く請求した場合

振替請求とは

実際に行った診療内容よりも保険点数の高い他の診療内容に振り替えて請求した場合

二重請求とは 

同一の診療について患者から自費で料金を受領し、保険でも請求した場合

重複請求とは  

請求済みのものを再度請求した場合

その他  

施設基準を満たさない請求、無資格者に診療行為をさせた場合の請求、業務上の傷病についての保険請求、保険診療と認められないものの請求など

監査後の措置について

監査後の措置については3種類あります。

注意

軽微な過失により、不正又は不当な診療、もしくは、診療報酬の請求を行ったものについては、一定期間内に再度個別指導が実施されます。

警告

重大な過失により、不正又は不当な診療、もしくは、診療報酬の請求を行ったものについては、厳重注意とされ、一定期間内に再度個別指導が実施されます。

取り消し処分

故意に不正又は不当な診療を行ったもの、もしくは、診療報酬の請求を行ったのについては、聴聞の後に保険指定の取り消し処分が実施されます。取り消し処分後は5年間再登録を行うことができません。

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