2022年|認知症療養指導料の点数・算定要件・カルテ記載

認知症

「認知症療養指導料」は、保険医療機関が認知症の患者様に対し、認知症療養計画に基づき「認知機能」「生活機能」「行動心理状態」「家族又は介護者等による介護の状況」に対する定期的な評価、抗認知症薬等の効果や副作用の有無等の定期的な評価等を行い、診療録にその要点を記載し、療養指導を行うことで算定できる医学管理料です。

認知症とは・・・
さまざまな原因で脳の神経細胞が破壊・減少し、日常生活が正常に送れなくなる状態のことをいいますが、認知症にもいくつかの種類があります。 当院へ通院・入院加療を受けられる患者様の中にも認知症の方は多くおられますが、最も多いのは「アルツハイマー型認知症」です。2018年時点で高齢者の約7人に1人は認知症であることが確認されており、2025年には675~730万人に増え、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。

今回は認知症療養指導料の点数と算定要件について解説していきたいと思います。

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認知機能の定期的な評価

認知機能とは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力をさし、ミニメンタルステート検査または長谷川式認知症スケール等を用いて評価されます。

MMES(ミニメンタルステート検査)

MMSEは時間の見当識、場所の見当識、3単語の即時再生と遅延再生、計算、物品呼称、文章復唱、3段階の口頭命令、書字命令、文章書字、図形模写の計11項目から構成される30点満点の認知機能検査です。23点以下が認知症疑い、27点以下は軽度認知障害(MCI)を疑います。

HDSーR(長谷川式認知症スケール)

HDSーRは年齢、見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品記銘、言語流暢性の9項目からなる30点満点の認知機能検査です。HDS-Rは20点以下が認知症疑いと判断されます。

生活機能の定期的な評価

ADL

日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。

IADL

掃除・料理・洗濯・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味などの複雑な日常生活動作のことを指します。

行動・心理症状

DBDスケール

認知症の行動・心理症状の評価尺度です。

NPI

妄想,幻覚,興奮,抑うつ,不安,多幸,無為,脱抑制,易刺激性,異常行動の10項目の頻度と重症度を評価するものです。

家族又は介護者等による介護の状況

介護負担度の評価(NPI等)

認知症療養指導料の点数

B005-7-2 認知症療養指導料

  1. 認知症療養指導料1 350点
  2. 認知症療養指導料2 300点
  3. 認知症療養指導料3 300点

認知症療養指導料1の算定要件

当該保険医療機関の紹介により他の保険医療機関において認知症の鑑別診断を受け、「認知症専門診断管理料1」を算定した患者であって、入院中の患者以外の患者又は療養病棟に入院している患者に対して、当該保険医療機関において、認知症療養計画に基づいた治療を行うとともに、当該患者又はその家族等の同意を得た上で、当該他の保険医療機関に当該患者に係る診療情報を文書により提供した場合に、当該治療を行った日の属する月を含め 6月を限度として、月1回に限り算定する。

認知症療養指導料2の算定要件

当該保険医療機関の紹介により他の保険医療機関において「認知症サポート指導料」を算定した患者であって、入院中の患者以外のものに対して、当該他の保険医療機関から認知症の療養方針に係る助言を得て、当該保険医療機関において、認知症療養計画に基づいた治療を行うとともに、当該患者又はその家族等の同意を得た上で、当該他の保険医療機関に当該患者に係る診療情報を文書により提供した場合に、当該治療を行った日の属する月を含め 6月を限度として、月1回に限り算定する。

認知症療養指導料3の算定要件

新たに認知症と診断された患者又は認知症の病状変化により認知症療養計画の再検討が必要な患者であって、入院中の患者以外のものに対して、「認知症患者に対する支援体制の確保に協力している医師」が、当該患者又はその家族等の同意を得て、療養方針を決定し、認知症療養計画を作成の上、これらを当該患者又はその家族等に説明し、文書により提供するとともに、当該保険医療機関において当該計画に基づく治療を行う場合に、当該治療を開始した日の属する月を含め 6月を限度として、月1回に限り算定する。

認知症患者に対する支援体制の確保に協力している医師とは1に加え、2又は3のいずれかを満たす医師をいう。

  1. 国立研究開発法人国立長寿医療研究センターが都道府県又は指定都市の委託を受けて実施する認知症サポート医養成研修を修了した医師であること。
  2. 直近 1 年間に、「認知症初期集中支援チーム」等、市区町村が実施する認知症施策に協力している実績があること。
  3. 直近 1 年間に、都道府県医師会又は指定都市医師会を単位とした、かかりつけ医等を対象とした認知症対応力の向上を図るための研修の講師を務めた実績があること

診療録記載の重要性

私は何度もここでお伝えしたおりますが、診療録記載は診療の全てと言っても過言ではありません。

厚生局の個別指導を何度も受けてきましたが、それはそれはとてもシビアで厳しいものです。

いくら親切丁寧は診察を行ってもそれらの要点を記載していなければ、指導や管理をしたものとみなされませんから、日々の診療録記載はとても大切なのです。

当該管理料算定では「定期的な評価抗認知症薬等の効果や副作用の有無等の定期的な評価等を行い、診療録にその要点を記載し、療養指導を行うことで算定できる」とされていますね。

では、Aさんのカルテを例にあげてみましょう。

S)先生、おはようございます
昨日、夜ご飯は何を食べたかしら?
そうそう、お魚だったわ
お薬は娘が管理してくれて今朝も飲みましたよ

O)表情穏やか
歩行安定
四肢に明らかな麻痺なし
コミニュケーション良好

A)アルツハイマー型認知症
本日、上記フォローの為、長谷川式スケールを施行した
結果:17点 前回と変わりなし
娘様の話では、ここ数日間、傾眠あるとのことで食思低下もみられているとのこと
このまま状態悪化するようであれば投薬変更も考慮する

娘様、ご本人に以下の指導を行った
ADL低下を防ぐため、毎日20分程度の運動(散歩や体操)を行ってください
食事は過度な塩分摂取に気をつけバランスの良い食生活を心がけてください
昼夜逆転しないよう規則正しい生活を送ってください

P)次回2週間後の再診とする

食事、生活、服薬指導は記載していなければしたことになりません。返戻の対象ともなりますのでしっかり記載するようにしましょう。

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