精神科入退院支援加算とは、精神病棟に入院中の患者が早期に退院し、医療や障害福祉、介護などのサービスを切れ目なく受けられるようにするための取り組みを評価する診療報酬です。
A246-2 精神科入退院支援加算(退院時1回) 1000点
精神科入退院支援加算の算定要件
注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関が、次に掲げる入退院支援のいずれかを行った場合に、退院時1回に限り、所定点数に加算する。ただし、精神病棟入院基本料の注7若しくは精神療養病棟入院料の注5に規定する精神保健福祉士配置加算、精神科地域移行実施加算又は精神科退院指導料を算定する場合は、算定できない。
イ 退院困難な要因を有する入院中の患者であって、在宅での療養を希望するもの(入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は特定入院料のうち、精神科入退院支援加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)に対して入退院支援を行った場合
ロ 連携する他の保険医療機関において当該加算を算定した患者(入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は特定入院料のうち、精神科入退院支援加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)の転院(1回の転院に限る。)を受け入れ、当該患者に対して入退院支援を行った場合
注2 精神保健福祉法第29条又は第29条の2に規定する入院措置に係る患者について、都道府県、保健所を設置する市又は特別区と連携して退院に向けた支援を行った場合に、精神科措置入院退院支援加算として、退院時1回に限り、300点を更に所定点数に加算する。
精神科入退院支援加算の留意事項
(1) 精神科入退院支援加算は、精神病棟に入院中の患者が、早期に退院するとともに、医療、障害福祉、介護その他のサービスを切れ目なく受けられるように、入院早期から包括的支援マネジメントに基づく入退院支援を実施することを評価するものである。なお、第2部通則5に規定する入院期間が通算される入院については、1入院として取り扱うものとするが、精神科入退院支援加算にあってはこの限りでない。
(2) 入退院支援及び地域連携業務に専従する職員(以下「入退院支援職員」という。)を各病棟に専任で配置し、原則として入院後7日以内に患者の状況を把握するとともに退院困難な要因を有している患者を抽出する。なお、ここでいう退院困難な要因とは、以下のものである。
ア 精神保健福祉法第29条又は第29条の2に規定する入院措置に係る患者であること
イ 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第42条第1項第1号又は第61条第1項第1号に規定する同法による入院又は同法第42条第1項第2号に規定する同法による通院をしたことがある患者であること
ウ 医療保護入院の者であって、当該入院中に精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条第6項第2号に規定する委員会の開催があった者であること
エ 当該入院の期間が1年以上の患者であること
オ家族又は同居者から虐待を受けている又はその疑いがあること
カ生活困窮者であること
キ 同居者の有無に関わらず、必要な養育又は介護を十分に提供できる状況にないこと
ク 身体合併症を有する患者であって、退院後に医療処置が必要なこと
ケ 入退院を繰り返していること
コ家族に対する介助や介護等を日常的に行っている児童等であること
サ児童等の家族から、介助や介護等を日常的に受けていること
シ その他平成28~30年度厚生労働行政調査推進補助金障害者対策総合研究事業において「多職種連携による包括的支援マネジメントに関する研究」の研究班が作成した、別紙様式51に掲げる「包括的支援マネジメント 実践ガイド」における「包括的支援マネジメント 導入基準」を1つ以上満たす者であること(この場合、「包括的支援マネジメント 導入基準」のうち該当するものを診療録等に添付又は記載すること。)
(3) 退院困難な要因を有する患者について、原則として7日以内に患者及びその家族等と病状や退院後の生活も含めた話合いを行うとともに、関係職種と連携し、入院後7日以内に退院支援計画の作成に着手すること。なお、必要に応じ、退院後の居住先や日中の活動場所を訪問し、患者の病状、生活環境及び家族関係等を考慮しながら作成することが望ましい。
(4) 退院支援計画の作成に当たっては、入院後7日以内に病棟の看護師及び病棟に専任の入退院支援職員並びに入退院支援部門の看護師及び精神保健福祉士等が共同してカンファレンスを実施する。なお、カンファレンスの実施に当たっては、必要に応じてその他の関係職種が参加すること。また、当該患者に対し、精神保健福祉法第29条の6に規定する退院後生活環境相談員が別に選任されている場合は、退院後生活環境相談員もカンファレンスに参加すること。当該加算の届出を行った時点で入院中の患者については、できるだけ早期に病棟の看護師及び病棟に専任の入退院支援職員並びに入退院支援部門の看護師及び精神保健福祉士等が共同してカンファレンスを実施する。
(5) 退院支援計画については、別紙様式6の4又はこれに準ずる様式を用いて作成すること。また、文書で患者又はその家族等に説明を行い、交付するとともに、その内容を診療録等に添付又は記載する。なお、当該計画を患者又は家族に交付した後、計画内容が変更となった場合は、患者又はその家族等に説明を行い、必要に応じて、変更となった計画を交付する。
(6) 退院困難な要因を有している患者のうち、「ウ 医療保護入院の者であって、当該入院中に精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条第6項第2号に規定する委員会の開催があった者」にあっては、(3)及び(4)の規定に関わらず、当該委員会の開催及び退院支援計画の作成をもって、当該加算の算定対象とする。また、退院困難な要因を有している患者のうち、「エ 当該入院の期間が1年以上の患者」にあっては、(3)及び(4)の規定に関わらず、退院支援計画の作成及び退院・転院後の療養生活を担う保険医療機関等との連絡や調整又は障害福祉サービス等若しくは介護サービス等の導入に係る支援を開始することをもって、当該加算の算定対象とする。
(7) 当該病棟又は入退院支援部門の入退院支援職員は、他の保険医療機関や障害福祉サービス等事業所等を訪れるなどしてこれらの職員と面会し、転院・退院体制に関する情報の共有等を行うこと。
(8) 当該患者について、概ね3月に1回の頻度でカンファレンスを実施し、支援計画の見直しを適宜行うこと。また、必要に応じてより頻回の開催や、臨時のカンファレンスを開催すること。なお、医療保護入院の者について、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条第6項第2号に規定する委員会の開催をもって、当該カンファレンスの開催とみなすことができる。この際、「措置入院者及び医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(令和5年11月27日障発1127第7号)に規定する医療保護入院者退院支援委員会の審議記録の写しを診療録等に添付すること。
(9) (8)のカンファレンスの出席者は、以下のとおりとする。
ア 当該患者の主治医
イ 看護職員(当該患者を担当する看護職員が出席することが望ましい)
ウ 病棟に専任の入退院支援職員
エアからウまで以外の病院の管理者が出席を求める当該病院職員(当該患者に対し、精神保健福祉法第29条の6に規定する退院後生活環境相談員が選任されており、当該退院後生活環境相談員がアからウまでと別の職員である場合は、当該退院後生活環境相談員も退院支援委員会に参加すること)
オ 当該患者
カ当該患者の家族等
キ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条の7に規定する地域援助事業者その他の当該患者の退院後の生活環境に関わる者
アからエまでは参加が必須である。オがカンファレンスに出席するのは、本人が出席を希望する場合であるが、本人には開催日時及びカンファレンスの趣旨について事前に丁寧に説明し、委員会の出席希望について本人の意向をよく聞き取ること。また、参加希望の有無にかかわらずカンファレンスの内容を説明すること。カ及びキは、オが出席を求め、かつ、当該出席を求められた者が出席要請に応じるときに限り出席するものとする。また、出席に際しては、オの了解が得られる場合には、オンライン会議等、情報通信機器の使用による出席も可能とすること。
(10) 退院先については、診療録等に記載し、又は退院先を記載した文書を診療録等に添付すること。
(11) 死亡による退院については算定できない。
(12) 「注2」に規定する精神科措置入院退院支援加算は、措置入院又は緊急措置入院に係る患者(措置入院又は緊急措置入院後に当該入院を受け入れた保険医療機関又は転院先の保険医療機関において医療保護入院等により入院継続した者を含む。以下この項において「措置入院者」という。)に対して、入院中から、都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下この項において「都道府県等」という。)と連携して退院に向けた以下の全ての支援を実施した場合に、所定点数に加算する。
ア 当該保険医療機関の管理者は、措置入院者を入院させた場合には、入院後速やかに、当該患者の退院後の生活環境に関し、本人及びその家族等の相談支援を行う担当者を選任すること。
イ 都道府県等が作成する退院後支援に関する計画が適切なものとなるよう、多職種で共同して当該患者の退院後支援のニーズに関するアセスメントを実施し、都道府県等と協力して計画作成のために必要な情報収集、連絡調整を行うこと。
ウ退院後支援に関する計画を作成する都道府県等に協力し、当該患者の入院中に、退院後支援のニーズに関するアセスメントの結果及びこれを踏まえた計画に係る意見書を都道府県等へ提出すること。
エ アからウまでに関して、精神障害者の退院後支援に関する指針に沿って実施すること。
(13) 「注2」における退院とは、自宅等へ移行することをいう。なお、ここでいう「自宅等へ移行する」とは、患家、介護老人保健施設、介護医療院又は障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う施設又は福祉ホーム(以下「精神障害者施設」という。)へ移行することである。また、ここでいう「患家」とは、退院先のうち、同一の保険医療機関において転棟した場合、他の保険医療機関へ転院した場合及び介護老人保健施設、介護医療院又は精神障害者施設に入所した場合を除いたものをいう。
精神科入退院支援加算に関する施設基準
(1) 当該保険医療機関内に、入退院支援及び地域連携業務を担う部門(以下この項において「入退院支援部門」という。)が設置されていること。
(2) 次のア又はイを満たすこと。
ア 当該入退院支援部門に、入退院支援及び地域連携業務に関する十分な経験を有する専従の看護師及び入退院支援及び地域連携業務に関する経験を有する専任の精神保健福祉士が配置されていること。
イ 当該入退院支援部門に、入退院支援及び地域連携業務に関する十分な経験を有する専従の精神保健福祉士及び入退院支援及び地域連携業務に関する経験を有する専任の看護師が配置されていること。
当該専従の看護師又は精神保健福祉士(以下この項において「看護師等」という。)については、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を行っている専従の非常勤看護師等(入退院支援及び地域連携業務に関する十分な経験を有する看護師等に限る。)を2名以上組み合わせることにより、常勤看護師等と同じ時間帯にこれらの非常勤看護師等が配置されている場合には、当該基準を満たしているとみなすことができる。
なお、入退院支援部門は、精神保健福祉士配置加算若しくは地域移行機能強化病棟入院料の退院支援部署又は精神科地域移行実施加算の地域移行推進室と同一でもよい。また、入退院支援部門に専従する従事者が精神保健福祉士の場合には、当該精神保健福祉士は、精神科地域移行実施加算の地域移行推進室と兼務することができる。
(3) 入退院支援及び地域連携業務に専従する看護師等が、当該加算の算定対象となっている各病棟に専任で配置されていること。当該専任の看護師又は精神保健福祉士が配置される病棟は1人につき2病棟、計120床までに限る。なお、20床未満の病棟及び治療室については、病棟数の算出から除いてよいが、病床数の算出には含めること。また、病棟に専任の看護師等が、入退院支援部門の専従の職員を兼ねることはできないが、専任の職員を兼ねることは差し支えない。
(4) 次のア又はイを満たすこと。
ア 以下の(イ)から(ホ)に掲げる、転院又は退院体制等についてあらかじめ協議を行い連携する機関(以下「連携機関」という。)の数の合計が 10 以上であること。ただし、(イ)から(ホ)までのうち少なくとも3つ以上との連携を有していること。また、(2) 又は(3)の職員と、それぞれの連携機関の職員が年3回以上の頻度で対面又はビデオ通話が可能な機器を用いて面会し、情報の共有等を行っていること。なお、面会には、個別の退院調整に係る面会等を含めて差し支えないが、年3回以上の面会の日付、担当者名、目的及び連携機関の名称等を一覧できるよう記録すること。
(イ) 他の保険医療機関
(ロ) 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく一般相談支援、特定相談支援、地域移行支援、地域定着支援、自立生活援助、共同生活援助又は就労継続支援等の障害福祉サービス等事業者
(ハ) 児童福祉法に基づく障害児相談支援事業所等
(ニ) 介護保険法に定める居宅サービス事業者、地域密着型サービス事業者、居宅介護支援事業者又は施設サービス事業者
(ホ) 精神保健福祉センター、保健所又は都道府県若しくは市区町村の障害福祉担当部署
イ 直近1年間に、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第 20 項に規定する地域移行支援を利用し退院した患者又は退院後の同条第 16 項に規定する自立生活援助若しくは同条第21項に規定する地域定着支援の利用に係る申請手続きを入院中に行った患者の数の合計が5人以上であること。
(5) 病棟の廊下等の見やすい場所に、患者及び家族から分かりやすいように、入退院支援及び地域連携業務に係る病棟に専任の職員及びその担当業務を掲示していること。
疑義解釈
(問)「入院後7日以内に退 院支援計画の作成に着手すること。」とあるが、退院支援計画の交付日についてどのように考えればよいか。
(答)精神科入退院支援加算に係る退院支援計画を作成後、速やかに患者に交付すること。
(問)「退院困難な要因」として「身体合併症を有する患者であって、退院後に医療処置が必要なこと」とあるが、身体合併症とは具体的にどのような症状のことをいうのか。
(答)精神科身体合併症管理加算の算定患者と同様の取り扱いとする。
(問)施設基準において求められる入退院支援及び地域連携業務に専従している看護師又は精神保健福祉士が、精神療養病棟入院料又は地域移行機能強化病棟入院料の施設基準における退院支援相談員の業務を兼ねてもよいか。
(答)差し支えない。
(問)「退院困難な要因を有する患者について、原則として7日以内に患者及びその家族等と病状や退院後の生活も含めた話合いを行うとともに、関係職種と連携し、入院後7日以内に退院支援計画の作成に着手する。」とされているが、新たに当該加算を届け出た場合に、届出時点での入院患者についての取扱いはどうか。
(答)当該加算の届出を行った時点で入院中の患者について、届出後に退院支援計画を作成し、その他の要件を満たした場合は、当該加算を算定可能。 ただし、届出後3月以内に患者及び家族と話合いを行い、退院支援計画の作成に着手することが望ましい。 また、医療保護入院の者であって、当該入院中に精神保健福祉法第33条第6項第2号に規定する委員会の開催があったもの又は当該入院の期間が1年以上のものについては、退院支援計画の作成時期によらず、それぞれ当該委員会の開催及び退院支援計画の作成又は退院支援計画の作成及び退院・転院後の療養生活を担う保険医療機関等との連絡や調整又は障害福祉サービス等若しくは介護サービス等の導入に係る支援を開始することをもって、当該加算の算定対象となる。これらの患者についても、3月以内に患者及び家族と話合いを行い、退院支援計画の作成に着手することが望ましい。