検体検査の中に「糞便検査」があります。
糞便検査は腸管感染症の原因を探るために行う検査です。腸管感染症の原因となる病原微生物は細菌のほかにウイルス、寄生虫などがあります。
ではそれぞれの検査内容と適応疾患についてご説明していきたいと思います。
虫卵検出(集卵法)(糞便)
レセ電:160005710/虫卵検出(集卵法)(糞便)
点数:15点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 吸虫症
- 蛔虫症
- 条虫症
- 鉤虫症
検査の内容
糞便中の寄生虫卵の検査で、産卵数の少ない肝吸虫、横川吸虫、肺吸虫、日本住血吸虫や発見しにくい小型寄生虫などには集卵法を行います。
ウロビリン(糞便)
レセ電:160112610/ウロビリン(糞便)
点数:15点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 黄疸
- 肝炎
- 閉塞性黄疸
- 溶血性貧血
検査の内容
便中ウロビリノゲンは生体外で酸化されてウロビリンとなり、閉塞性黄疸では減少し、溶血性疾患では増加します。
閉塞性黄疸とは作られた胆汁は胆管を通り、胆嚢にためられた後、総胆管を通って十二指腸に排出されます。 何らかの原因により胆管がつまってしまい、本来腸の中に排出される胆汁が血液の中に逆流して起こる黄疸を「閉塞性黄疸」といいます。
糞便塗抹顕微鏡検査(虫卵、脂肪及び消化状況観察を含む)
レセ電:160005510/糞便塗抹
点数:20点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 潰瘍性大腸炎
- 感染性腸炎
- 熱帯性スプルー
- 慢性膵炎
- 慢性下痢症
- 吸収不良症候群
- 蛔虫症
- 鉤虫症
- 鞭虫症
慢性膵炎とは、長期間にわたって膵臓の炎症が持続することによって、この2つのはたらきがいずれも徐々に衰えていく病気です。
検査の内容
糞便をスライドガラスに塗抹し、鏡検または簡単な化学反応を行って、寄生虫卵、脂肪などを観察します。産卵数の多い土壌伝播線虫には適しており、吸収不良症候群や膵機能不全などでは、鏡検下で脂肪酸・中性脂肪は染色や化学反応などで検出されます。
虫体検出(糞便)
レセ電:160006410/虫体検出(糞便)
点数:23点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 蟯虫症
- 広節裂頭条虫症
- 無鉤条虫症
- 有鉤条虫症
蟯虫症とは蟯虫症は、腸に寄生する線虫の一種である蟯虫によって引き起こされる感染症で、通常は小児に発生します。 蟯虫の虫卵を飲み込むことによって感染が起こります。
検査の内容
自然排便や駆虫剤投与後の便の中の寄生虫を肉眼やルーペで検出します。回虫や条虫などの検出を行います。
糞便中脂質
レセ電:160006310/糞便中脂質(糞便)
点数:25点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 吸収不良症候群
- 膵炎
- 膵癌
- のう胞性線維症
検査の内容
便中の脂肪量を定量し、便1g当たりや、1日の便中脂肪量を計算して、脂肪便の判定を行います。吸収不良症候群や膵疾患の診療に用いる検査です。
糞便中ヘモグロビン定性
レセ電:160006510/糞便中ヘモグロビン定性
点数:37点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 大腸癌
- 大腸ポリープ
- 腸閉塞
- 腸重積症
- 急性大腸炎
- 大腸憩室炎
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 腸結核
- アメーバ赤痢
- 痔核
- 過敏性腸症候群
- 薬剤性腸炎
検査の内容
ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いた免疫クロマト法でヘモグロビンを検出します。科学的な潜血反応検査に比べてヒトヘモグロビンに特異的であり、食事制限が不要です。
大腸癌など下部消化管からの出血のスクリーニング検査として行われます。
【診療報酬請求メモ】
ヘモグロビン検査を免疫クロマト法にて行った場合は、糞便中ヘモグロビン定性により算定します。
虫卵培養(糞便)
レセ電:160006710/虫卵培養(糞便)
点数:40点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 鉤虫症
- 東洋毛様線虫症
- 糞線虫症
鉤虫症鉤虫症は,ズビニ鉤虫またはアメリカ鉤虫による感染症です。感染初期の症状としては、幼虫侵入部位の発疹のほか、腹痛など消化管症状などを認めます。
検査の内容
鉤虫や糞線虫の検出では、見落としを防ぐため、虫卵を幼虫に成長させてから判断することがあります。
糞便中ヘモグロビン
レセ電:160006810/糞便中ヘモグロビン
点数:41点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
※外来迅速検体検査加算算定対象
適応疾患
- 大腸癌
- 大腸ポリープ
- 腸閉塞
- 腸重積症
- 急性大腸炎
- 大腸憩室炎
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 腸結核
- アメーバ赤痢
- 痔核
- 過敏性腸症候群
- 薬剤性腸炎
検査の内容
ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて、定量的に便1g当たりのヘモグロビン量を測定します。
大腸癌など下部消化管からの出血のスクリーニングとして行われる検査です。
糞便中ヘモグロビン及びトランスフェリン定性・定量
レセ電:160113110/糞便中ヘモグロビン及びトランスフェリン定性・定量
点数:56点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 大腸癌
- 大腸ポリープ
検査の内容
糞便中のヘモグロビン検査は偽陰性になることもあるため、血液由来成分であり消化管での変性・分解が少ないトランスフェリンを同時に測定することで消化管出血の検出感度を高めます。
カルプロテクチン(糞便)
レセ電:160210050/カルプロテクチン
点数:276点
判断料:尿・糞便等検査判断料 34点
適応疾患
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
検査の内容
酸素免疫測定法または蛍光酸素免疫測定法により、糞便中のカルプロテクチン量を測定することで、慢性的な炎症性腸疾患を診断・把握する際に、内視鏡を実施するかの判断の補助となります。
カルプロテクチンとは
カルプロテクチンとは、好中球の細胞質成分の60%を占め、腸管粘膜で炎症が生じることによって好中球から放出される物質です。
腸管に炎症が発生すると、白血球が浸潤し管腔に移行するため、糞便中の白血球由来成分であるカルプロテクチン量が高値となります。
また、過敏性腸症候群などの症状は炎症性腸疾患と似ていますが、炎症等の器質的疾患のない機能性腸疾患では糞便中カルプロテクチン値は低値となります。
【診療報酬請求メモ】
- カルプロテクチンを慢性的な炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病等)の診断補助を目的として測定する場合は、FEIA法 により測定した場合に算定できます。ただし、腸管感染症が否定され、下痢、腹痛や体重減少などの症状が3月以上持続する患者であって、肉眼的血便が認められない患者において、慢性的な炎症性腸疾患が疑われる場合の内視鏡前の補助検査として実施することが算定要件となります。また、その要旨を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載することが必要です。
- 本検査を潰瘍性大腸炎の病態把握を目的として測定する場合は、ELISA法、FEIA法又は金 コロイド凝集法により測定した場合に、3月に1回を限度として算定できます。ただし、医学的な必 要性から、本検査を1月に1回行う場合には、その詳細な理由及び検査結果を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載することが必要です。
- 慢性的な炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン 病等)の診断補助又は潰瘍性大腸炎の病態把握を 目的として、本検査及び区分番号「D313」大腸内視鏡検査を同一月中に併せて行った場合は主たるもののみ算定します。
- 診療報酬明細書の適応欄に前回の実施日(初回の場合は初回であること)を記載する必要があります。