機能強化加算は、適切な診療を行うほか、疾病や健康などに関する相談に継続的に応じ、必要に応じて専門医を紹介する「かかりつけ医機能」を評価する点数あり、地域包括診療料・加算など関連する報酬を届け出た医療機関が初診時に算定できます。
厚労省の調査(2018年)の結果によると、「機能強化加算」の届け出医療機関数は病院が1048施設、診療所が1万1793施設で機能強化加算が算定されていると報告されています。
この調査結果を受けて健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、かかりつけ医機能を推進するために機能強化加算の算定が必要なことは「百歩譲って理解する」と発言しましたが、機能強化加算を届け出ているにも関わらず、他の医療機関の受診状況や薬の服用状況を医師に伝えていない患者が一定程度いることから、患者の受診状況や服薬状況を確認していない医療機関が一定数あると指摘しました。
「かかりつけ医の役割さえ説明していない医療機関が過半数存在している」と述べ、こうした医療機関は「かかりつけ医機能を果たしているとは言い難い」と強く批判され、その上でかかりつけ医機能を有することを院内掲示し、診療前に文書を用いて患者に説明することを算定要件に加えるよう要求されました。
今回は、機能強化加算の施設基準と掲示及び交付文書についてお話ししたいと思います。また、令和4年度で見直された改定内容についても解説してい来ます!
機能強化加算に関する施設基準について
(1)診療所又は許可病床数が200床未満の病院であること
(2)次のいずれかに関わる届出を行っているまたは算定要件を満たしていること。
- 地域包括診療加算
- 地域包括診療料
- 小児かかりつけ診療料
- 地域包括診療加算2を算定した患者が3人以上(直近1年)
- 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「1」在宅患者訪問診療料(Ⅱ)または往診料を算定した患者さんの数の合計が3人以上(直近1年)
- 在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に限る)
- 施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院に限る)
(3)地域における保健・福祉・行政サービス等に係る対応として、以下のいずれかを行っている常勤の医師を配置していること。
- 介護保険制度の利用等に関する相談への対応及び要介護認定に係る主治医意見書の作成を行っていること。
- 警察医として協力していること。
- 母子保健法 第12条及び第13条に規定する乳幼児の健康診査を実施していること。
- 予防接種法 第5条第1項に規定する予防接種を実施していること。
- 幼稚園の園医、保育所の嘱託医又は小学校、中学校若しくは高等学校の学校医に就任していること。
- 「地域包括支援センターの設置運営について」に規定する地域ケア会議に出席していること。
- 通いの場や講演会等の市町村が行う一般介護予防事業に協力していること。
(4)地域におけるかかりつけ医機能として、必要に応じ、以下の対応を行っていること。以下の対応を行っていることについて保険医療機関の見やすい場所及びホームページ等に掲示していること。
- 患者が受診している他の医療機関及び処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を行うこと。
- 専門医師又は専門医療機関への紹介を行うこと。
- 健康診断の結果等の健康管理に係る相談に応じること。
- 保健・福祉サービスに関する相談に応じること。
- 診療時間外を含む、緊急時の対応方法等に係る情報提供を行うこと。
また、医療機能情報提供制度を利用してかかりつけ医機能を有する医療機関等の地域の医療機関を検索できることを、当該医療機関の見やすい場所に掲示していること。
機能強化加算に係る院内掲示(5)(4)に基づき掲示している内容を記載した文書を院内の見やすい場所に置き、患者さんが持ち帰ることができるようにすること、また、患者さんから求めがあった場合は、文書を交付すること。
機能強化加算の届出に関して、実績は要しません。
施設基準の通則について
施設基準の届出には以下に該当することが必要です。
- 当該届出を行う前6月間において当該届出に係る事項に関し、不正又は不当な届出(法 令の規定に基づくものに限る。)を行ったことがないこと。
- 当該届出を行う前6月間において療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等第三に規定する基準に違反したことがなく、かつ現に違反していないこと。
- 当該届出を行う前6月間において、健康保険法第78条第1項及び高齢者の医療の確保に関する法律第72条第1項の規定に基づく検査等の結果、診療内容又は診療報酬の請求に関し、不正又は不当な行為が認められたことがないこと。
- 当該届出を行う時点において、厚生労働大臣の定める入院患者数の基準及び医師等の員数の基準並びに入院基本料の算定方法に規定する入院患者数の基準に該当する保険医療機関又は医師等の員数の基準に該当する保険医療機関でないこと。
令和4年度 機能強化加算の見直しについて
改訂前の算定に要件は「外来医療における適切な役割分担を図り、より的確で質の高い診療機能を評価する観点から、かかりつけ医機能を有する医療機関に初診を評価するもの」とされておりますが、令和4年度の改定後より以下の算定要件が追加されました。
- 専門医療機関への受診の要否の判断を含む診療の評価
- 患者さんが受診している他の医療機関及び処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を行い、診療録にその旨を記載すること
- 専門医師または専門医療機関への紹介を行うこと
- 健康診断の結果などの健康管理に関わる相談に応じること
- 保険・福祉サービスに係る相談に応じること
- 診療時間外を含む、緊急時の対応方法に係る情報提供を行うこと
上記内容を必要に応じて、患者さんに対応するとともに、院内及びホームページに掲示し、必要に応じて患者さんに説明することが必要とされています。
施設基準については、「適切な受診につながるような助言及び指導を行うことなど、質の高い診療機能を有する体制が整備されていること」「地域において包括的な診療を担う医療機関であることについて、当該保険医療機関の見やすい場所及びホームページなどに掲示するなどの取り組みを行なっていること」が追加されています。
施設基準の届出について
機能強化加算の施設基準に関わる届出は、各地方厚生局のホームページにて「別紙7の2」をダウンロードして、届出を行って下さい。FAXによる送付は受付けていませんので注意しましょう。
機能強化加算の施設基準に係る届出機能強化加算の施設基準に係る届出添付書類
届出を行う地方厚生局HPについて
届出を行う際は、保険医療機関が所在する都道府県を管轄する地方厚生局に「添付書類」を1部提出する必要があります。
各月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から当該届出に係る診療報酬を算定することができます。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から算定することができます。